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「あー…しっかしさ~、門限無いってのはいいよね~、ウチもあたしはそうだけど、普段はチビ共の事があるから、何もない時は実質門限があるようなもんなのよぉ~」
「ぼくはお父さんもお母さんも、かなちゃんも何にも言わないけど、急がなきゃね」
気を紛らわすように、お互いの家庭事情に花を咲かせる二人。
藍良は、歌音のお家事情も熟知していた。
聖鳴家に門限は無く、両親と妹は歌音本人に何も言わなかった。ただ無事を喜んだ。どうしてなのかはやはり何故かはよく分からなかった。聞いてもよく教えてくれなかった。
尤も、かく言う自分も過去のことをちゃんと話していないっていうのもあるし、スイーツショップでのバイトのお陰で施設の入所者では唯一、帰宅が遅い件でとやかく言われないのだが。
「けどウロコさんだけは口で叱るだけだけどめちゃくちゃ長いし、うるさいよ」
「ああ、あのチッパイケメンかぁ、あの人本当マジうざったいよね~」
藍良もそれに巻き込まれた事が何度かあった。
しかし、
『お前みたいに、体にまで持ちすぎているから悲しむ者もいるんだ!』
『あ~あ~、いいよなあ、上だけタプタプで腹は引っ込んでてよぉ、どうせ自分は全て引っ込んでいるオトコンナだ、奏様を柔らかく包めんガチガチ女だよ!!』
と言った具合にその内容は僻みだらけになってだんだんと脱線していくので、奏がププッと笑ってはい終わり。最後は燐が泣いて自室へ駆け込んで、そのまま出てこなかった事もあった。
理由は…うん、察した方がいい。
「じゃあ、わざとお家に入らずに、ウロコさん困らせちゃおっかなぁ~」
「そーそー、あのチッパイケメンは少し疲れさせてやんなきゃね」
と、ちょっとした悪戯を考えていた、そんな時だった。
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