プロローグ

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 …だが、その確信は一瞬で消え失せた。  ーザシュッ…ブシャアァァァァ…。  間近で肉の裂ける音が、次に遅れて血しぶきの噴き出す音が発せられた。  「…何だ?」  男たちは皆、耳を疑った。ナイフもあの左胸への一撃でもう終わって、それ以外では何所も切りつけていないし、もう誰も少年には手を出していない筈だ。  なら、何が起こった?  どこから、あんな音が聞こえた?  じゃあ、一体、誰が…  男たちは、あの音の聞こえた先に、ゆっくりと、振り向いた。そして皆、その光景に恐怖した。  「お、おい…どうなってんだよ…コレ…!」  あのナイフ男の頭が、頭を縦に割かれ、大量の血を噴き出していた。  男の頭部は、顔面から後頭部と、ぱっくりと裂け、左半分は今にもダラリと横に崩れ落ちそうな状況だった。右半分も、血液の流出が収まるにつれ、断面が露わになってきた。そして、男はぐらつきながら、背中のめりにして倒れた。  「お、おい、嘘…だよな?」  突然の事態にどよめく中で、仲間の一人が、顔を割かれた仲間に恐るおそる駆け寄り、脈を確かめた。男が即死していた事については、皆が確かめるまでも無く分かっていた。だが、誰もそれを信じたくなかった。  「…駄目だ」改めて仲間が死んだ事を確認した男が、首を横に振った。  途端、残った男達の脳裏に恐怖が過り、その場に生き残った者の、何人かが、狂いだした…。罰が…罰が当たったんだ…子供を数人がかりで襲い、殺したバチが…、いや違う。絶対に違う。あのガキは、この「国」を壊し、「国」でなくし、自分達から何もかもを奪い、消し去った奴らの生き残り。害虫だ。虫ケラだ。社会のクズだ。俺たちの誰かにクズガキを助けようとした奴か、敵を撃とうとした奴か、もしくはガキに肩入れしている輩が居たに違いない。きっとこの中に居る筈だ。見つけてやる。そして、この場で惨く殺してやる。あのガキの様に苦しめたうえで、息の根を止めてやる。何処にいやがる、誰だ、誰なんだ、一体、誰がっ…、  「…誰が殺ったんだぁぁぁぁぁぁぁっ‼」
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