星見ヶ丘(ほしみがおか)の宵空(よいぞら)

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星見ヶ丘(ほしみがおか)の宵空(よいぞら)

 うーん、これで、電波(でんぱ)()くなったかな。あ、(いま)ね、(つき)(うら)(ちか)くの、星見(ほしみ)(がおか)。うん、そうそう。(おぼ)えていてくれたんだ。はは、もう()(しず)んだから、一番星(いちばんぼし)()えているよ。  ああ、たしかに、(つき)(のぼ)りはじめているね。すごく(おお)きな、きれいな満月(まんげつ)()をこらせば、あなたが()えるかもね。え、なになに。(はや)()ってよ。あなた、つきのうら(えき)にいるのね。  (わたし)はまっすぐ、この位置(いち)からでは()えないつきのうら(えき)方向(ほうこう)をながめる。満月(まんげつ)のまばゆい(ひかり)が、(わたし)不安(ふあん)げな(かお)(すこ)笑顔(えがお)にしてくれた。  あら、この()元気(げんき)(うご)いたわ。まるでこの()もちゃんと、この(うつく)しい(つき)をながめて(よろこ)んだように。  うん。  うん。  うん。わかっているわ。里帰(さとがえ)出産(しゅっさん)()わったら、またそっちに(もど)らないとね。  うん。  うん。  うん。ほんとうはね。この()とずっといっしょにいたいよ。もちろん。
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