第一話 始は死から

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 どこまで行ってもゲーム脳。しかし、この予想。見事に的中する。  クロウは、アリスに握られた手を強く握り返し、足を止める。 「ひゃっ。――どうされたのですか?」  アリスは驚くが、すぐに理由に気付く。  不定期に鳴る金属音が階段上層からこちらに近づいてくる。  最初に見えたのは無骨な鉄製の剣。  続けて小気味良い音と一緒に雪崩れ込んできたのは骨だった。 「が、骸骨兵」  アリスの言葉と表情から察するに目の前の骨は、敵。  モンスター。  魔物。  化物。 「下がってください」 「はい」  クロウは、先に転がってきた剣を拾いアリスを自分の後方に下げる。  王女を守る勇者。  当たり前の構図。 (とは言ったものの――)  重い。ずしりと剣の重みが手から腕、肩へと伝わる。  その間に、骸骨兵は骨を人型に形成。  眼球の無い目は、こちらを睨んでいた。 (勝てる自信ないな)  しかし――。  どれだけ自信が無くとも。  どれだけ力が無かろうと。  どれだけ怠惰であろうと。  やらねばならない時はある。  クロウは剣をみぞおちの位置に構える。  暮井九朗のお気に入りの一つでもある  アニメ『ブレイドブレイバー』の主人公ツルギ・ジンによれば  素人が剣を扱うにあたり振り回すことは絶対にやってはいけない。  まず、敵に当たらない。  体力消費が激しい。  無駄に隙だらけ。  まさに、百害あって一利なし。  素人が立ち回る場合。  攻撃方法は体当たりぎみの突き一本。  ……相手が人間ならば。  残念ながら敵は、骸骨兵。骨。  けれど―― (だけれど――)  クロウは走りだす。  骸骨めがけて突進する。  構えた剣は進行方向にある骸骨兵を貫いた――いや、すり抜けた。 (そして、そこから)  クロウは剣の柄に自分の持てる  全握力を掛け、全体重を掛けた。  下に―― (砕けちまいな)  テコの原理を利用し、前方の肋骨を支点とした後方の肋骨破壊。  肋骨は骨の中でも脆い部類に入る。  支点もろとも一気に粉砕――する予定だった。 (あ、あれ?) (……カルシウム取りすぎだろ) (最高に最悪だ)  ふと、気付く。視線の先。  さきほどまであったはずの骸骨の腕が消えている。  すぐさま上方に顔を上げる。  そこには、振り上げられた骨の拳があった。  そして、拳は振り下ろされる――  現実は悪劣で無慈悲で冷酷だ。
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