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◆
現実とはいつも、自分の思い通りにはならない。
強い思いや確固たる意志も、現実という壁にあっけなくはじかれる。
セシル・ファーレンハイトは、現実を受け入れる。
だからこそ、地道な努力を怠らない。
勿論、もともと剣の才覚があったからこそ26という若さで名誉騎士という地位にまで上り詰めたわけなのだが。
そんな彼女でも、真っ直ぐな道をひたすら、すまし顔で歩いてこれた訳ではなく、何度も転び何度も回り道をした。
一般剣兵から出発した彼女は、数年と立たず騎士団への入団を果したが、その才覚を恐れた騎士団長はセシルを城下町から遠く離れた地方の騎士団へと異動させた。
もっともセシルはそこでも成果を残し、結局のところ名誉騎士という、騎士として最上位の称号を得ることになったわけだが――
不条理な現実は今でも受け入れがたいものである。
(それを少しでも無くしたかったからこそ)
(私はここまできたというのに――)
今度は自分が不条理な現実を告げなければならない立場になってしまった。
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