月光書店

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「やっぱり先生になるんだ?」 「うん。教員免許は取る。でも小学校はムリかなあ。水泳できないとダメらしいし」 「図書館司書は?」 「うーん、仕事、あんまりないっぽい」 「確かに。町立図書館、3人くらいしかいないもんねえ」  紅茶をもらって飲む。まだ移動販売の車は姿を現さない。でも、こんな夜にお菓子を食べながらおしゃべりできるなんて、それだけで楽しい。 「うちも札幌受けたいな」  めーちゃんは、マドレーヌのきつね色を掲げながら、独り言のように言った。 「ほんとに?!」  私はその横顔に叫んでしまう。ふたり一緒に札幌で高校生活を送れたらすごくすごく楽しいだろう。寮でも寂しくない。この町に戻ってくるときの汽車も、安心だ。正直、ひとり旅はとても不安だったのだ。 「でも、絶対受からないと、だよね」  地域をまたいでの公立受験は合格人数が限られる。特に、札幌を含む石狩学区は定員の5%という狭き門。公立の併願はないから、落ちたら私立高校に行くしかない。  だから、担任の先生も「もう少し考えて」と言っていた。  揺れる。  簡単にゆらゆらと、未来が揺らぐ。  自分がどうしたいのか、失敗したらどうなってしまうのか、考え出したらどろ沼だ。
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