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今日も朝霧哉泰は、アルバイト先である飲食店への道をスピードを出した自転車で駆け抜けていた。
哉泰の通っている高校からは駅8つ分と更に自転車を漕いで20分程度の場所にあるアルバイト先。何故その場所に決めたかというと、自宅から近いからだ。
放課後になると駅まで5分の距離を走り、電車に乗る。その電車に乗り遅れると次の電車はおよそ1時間後になってしまう。そうなるとアルバイトの時間に間に合わない。
学費や交通費、諸々のお金を払わなくてはならない為、どうしてもお金が欲しい。高校生のアルバイトでは、殆ど最低賃金で働かされる。少ない時給では大した金額は稼げない。そのせいで日数は週に5日、働ける時間ギリギリまで働くのだ。
更に年間所得を制限された金額以内で働くように親に決められていて、様々な制約の中でできる限り働かなくてはならない。
(あと5分……!)
今日は駅で知り合いに会い捕まってしまい、いつもより時間に余裕がなかった。
慌てて切り上げ、ほぼ全力で自転車を漕いで今に至る。
勤務開始時間までに間に合うか否か、遅刻ギリギリで職場に辿り着く。
乱雑に自転車を停め、籠から鞄をひったくって裏口へ駆け込む。
更衣室で大急ぎで着替えてから店のほうへ顔を出す。
「おはようございます」
24時間営業の店特有の挨拶をすると、調理場ーーー通称バックから1人の男性が顔を覗かせた。
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