それを見つけたばっかりに

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それを見つけたばっかりに

 回想を終えた私はふとして、今私を照らしているこの月明かりの出どころがムズムズと気になり始めた。一体どんな月がこの場を照らしているんだろう。そう思って私はひょいと夜空を見上げた。 ―あれ。でもそれはおかしかった、何だか。空は真っ暗でなんの変哲も無い夜空であった。けれどもおかしかった、月が見当たらないのだから。どこかに無いか、私を照らしている月が。あの白くまるい月は。…でも、どこにも見当たらない。…どうしてだろう、もしかして今日の月は黒い月で自分が見つけられないでいるだけなんじゃ無いか。  そう思っているうちに、私は心の中で別の考えが湧いてくるのを感じた。果たして自分は本当に、今の今まで光に照らされた表舞台に居たのだろうか。それは自分の勝手な思い上がりによる錯覚では無かったか。現実はどうだったんだ?…もしそうだとすれば、私が社会で輝けるのはいつ?どこ?思えば私は「今の自分は輝けてる」って満足して言えるのか?言えないからさっきみたいな溜息混じりの気分が時々やって来るんじゃ? ―駐車場を照らす月明かり、それを見つけたばっかりに私はこんな思いに苛まれる羽目になった。  モヤモヤした気持ちで私はその場をあとにした。 そんなある日の夜であった。私は月を見つけられなかったが、夜空の遠くの方には小さく月が浮かんでいるようでもあった。
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