闇の中でしか生きられない

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――そもそも、何故こんな夜更けにお見舞いに行こうと思ったのか。 傍から見たら疑問に思うだろう。 私だって、いつもならわざわざこんな夜遅い時間に連絡もなしにお見舞いに行こうなんて思わない。 ――――理由は1つ。 一昨日から、彼と一切連絡が取れないからだ。 彼と高校から仲の良い友人は、「あいつは月に1度は体調を崩して休むんだよ。昔からのことだし、心配しなくて大丈夫だよ」と笑って言っていた。 確かに、入学してから月に1度、彼は必ず体調を崩したと言って休んでいた。 だけど、メッセージを送ればその日のうちに必ず返信はきていたのだ。それなのに3日間も音信不通なのはおかしいだろう。 体調が芳しくなく倒れてしまったのではないか。動けずに1人で苦しんでいたら……。 いくつもの嫌な考えが脳裏を過ぎ去ってしまい、向かう足は自然と速くなる。 彼が住む部屋は805号室。最上階の角部屋だ。 エレベーターを使って一気に上階まで来た私は、彼の部屋の前に立ちササッと前髪を手で整えてからインターホンを鳴らす。 しかし、待てども彼が出てくる気配はない。 もう寝ているのだろうか。でも、もし1人で倒れていたら……。 胸に巣食う懸念は消えず、ドアの前で立ち尽くしてしまう。
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