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(1)
屋上は、僕のものだった。
屋上に出るためのドアには、鍵がかけられるようになっているみたいだったけど、閉まっていたことはない。
そのことに、たぶん、僕しか気付いてない。
誰も入って来ない、快適な空間。
昼休みを過ごすのには、最高の場所だ。
教室は、やたらと音が大きく聞こえる。
だから、いつも、屋上にポータブルプレイヤーを持っていって、音楽を聴いていた。
今日は、シャッフル再生と意見が合う。気分に合った、絶妙な選曲。
いつも、これくらい優秀ならいいのに。
アコースティック版の直後に、原曲をかけない方がいいことくらいは、そろそろ学習すべきだ。
あ、「マタアイマショウ」だ。
「愛しい人へ」「ベイビー・アイラブユー」ときてたから、「100万回の『I love you』」あたりを予想してたけど、なかなかいいチョイスだな。
「いい歌だね。なんていうタイトル?」
突然、割り込んでくる声がした。
何事だ?
今まで、そんなこと、なかった。
「あ、ごめん。そんなに驚くと思わなくて。」
声の主は、制服的に・・・3年生?
「いや、気持ちよさそうに歌ってたから、なんていう曲なのかなって聞きたくなって。」
歌ってた?
そうなのか。これから、気を付けよう。
あ、もう、こんな時間だ、教室戻ろう。
「あ、帰るんだ。ごめんね、なんか、邪魔しちゃって。」
?
さっきから、何を、一人でしゃべって、
あぁ、僕が返答する必要があったのか。
「『マタアイマショウ』」
「え?」
「SEAMOの『マタアイマショウ』」
「あ。あぁ、ありがとう。」
なんか、ぽけーっとした顔された。
曲名知りたかったのではないの。
まぁ、どうでもいいや。
時間だし、戻ろう。
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