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(3)
昨日のことがあったので、本日は、屋上に入る前に、敵影がないか、偵察。
うむ。誰もいないようだ。
では、音楽を聴くべし。
「そんなに、警戒しなくても。」
後ろ?いや、上??
不覚だ。まさか、そのようなところに人がいるとは。
「また、驚かせちゃったかな。ごめんね。ホントに。」
悪いと思っていて、あえてやっているのか。
なんと、凶悪な人格であろうか。
「いや、別に、邪魔をするつもりとかはないんだけど。」
そうなのか。
ならば、特に問題はない。
さて、無駄なやりとりに時間を費やした。
今日は、そうだな、「J-POP(女性ボーカル)」にしよう。
「桜色舞うころ」ね。
スローテンポの曲から入ったか。悪くない。
「今日は、歌わないの?」
何だ?
「別に、こっちのことは気にせずに、歌ってくれていいよ。」
邪魔しないのではなかったのか。
極めて、邪魔なのだが。
中島美嘉の繊細な声が、聴き取れないではないか。
「今は、何を聴いているの?」
"邪魔をするつもりとかはない"の定義が、共有できていない可能性があるな。
問いただすべきだろうか。
いや。
疑問形に思えるから、返答が求められているのかもしれない。
「歌わない。『桜色舞うころ』。」
「あ。そうなんだ。うん。その曲は、知ってる。」
合っていたようだ。
そうか、音楽を聴いている人間を見かけると、曲名を尋ねたくなるタイプなのか。
別に、その程度ならば、答えなくもない。
「SEAMOは、聴いたことなくてさ。名前は知ってたんだけど。」
その程度ではなかった。
まだ続くのか、このやりとり。
どうしよう。場所の変更も検討しなくてはならない。
「昨日、帰ってから、SEAMOのアルバム聴いてみた。好きな感じだった。」
ほほう?
そうなのか。
「マタアイマショウ」が収録されているアルバムは複数あるが、何を聴いたのだろう。
最初ならば、ベストが手に取りやすかろうか。
「あ、こっち見た。3-Aの三好です。よろしく。君は?」
あれ?
SEAMOの話をするのではないのか。
なら、別にいいや。
とりあえず、今日のところは、音量を上げて対処しよう。
「あ、ごめん。うるさかったね。ごめんね。」
やたら、謝る人だな。
え?「SAKURAドロップス」?
違うだろう、シャッフルよ。
確かに、両方とも、桜の季節だけを歌った曲ではないが、それはさすがに違うだろう。
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