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「私のお母さんも。」
富士子はそれ以上の言葉を全て飲み込む。
( 料理はしない。家事もしない。仕事もして無い。)
本当の事を言うと、それが悪口になるのかが富士子はわからなかった。先生が、
「人の悪口を言ってはいけない。」
と言っていた。
白井君が、
「一緒に食べよう。ママと二人じゃ食べきれないよ。」
と、言った。その時綺麗なピンク色の服を着て長い光る髪を茶色に染めてクルンと巻いた女の人が目の前に来た。富士子は飛び上がり、
「 こんにちは。」
と、挨拶した。
(こんな綺麗な人は見た事がない。)
白井君のママはニッコリ優しそうに、
「 あら、お友達。こんにちは。」
と、微笑んでいる。
富士子は優しい微笑みの奥にその人の本意を探る。富士子は自分の両親も信用していないから、おじいちゃんとおばあちゃん以外は信じる人は誰もいない。
( 白井君のママは、この日をとても楽しみにしてたんじゃないのかな。なんかそんな気がする。)
富士子は目の前のご馳走を一つでいいから食べたかったけれど、ここに自分は居るべきでは無いと判断した。もしも誰かに何かをもらったらお母さんに言わないと叩かれる。以前富士子は何ももらった記憶がないのだが母親から、
「 後でお返しをしないといけないだろうが。アタシに恥をかかせたねアンタは!」
と、死ぬほど殴られた。
「ありがとう。また後でね。失礼します。」
富士子は無邪気に甘える事をした事がなかった。
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