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学校にもどこにも居場所はない。
( トイレへ行こう。)
富士子はトイレの個室に入ってお弁当を開いた。
フタを開けると糸を引いた。一口ご飯を口に入れたが喉の奥に大きな塊が詰まっているような気がしてなかなか飲み込めない。お腹はペコペコのはずなのに食べる事が出来なかった。おじいちゃんは
「戦争の時に学校へお弁当を持って行く事が出来なかった。」
と、言っていたけれど、
(おじいちゃんは毎日こんな気持ちだったんだなぁ。
今は飽食の時代ってテレビで言ってるけど。)
富士子はお金持ちのお嬢様と人からは言われるが、意味がわからなかった。
(ご飯さえろくに食べれないお嬢様なんて、いるの?ここに私がいる。)
「ピーヒョロヒョロヒョロヒョロ。」
と、高い高い空からトンビが泣く声がかすかに聞こえた。
閉会式は長く暑く、お腹が空いて倒れそうだった。富士子の赤組は負けて隣の6年生のお兄さん達は飛び上がって喜んでいる。
( 運動会はお腹いっぱいの元気な子供のものだ。)
と、富士子は思った。
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