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小学校に入って初めての運動会に富士子は一人で行った。ご飯に梅干しが一つ乗ったお弁当を持って行った。
午前中の部がやっと終わって、富士子はのどはカラカラでフラフラだった。
敷物も何も無いから、どこで食べようかと校庭の隅を歩いていると、大きな敷物の上にお重に入った豪華なお弁当を広げて大勢の人で囲んでいる。その中に子供が帰って来ると、
「 頑張ったねー。見てたよ。」
「上手に出来たね。」
「 さあ、ゆっくりして食べなさい。喉が渇いたでしょう。」
富士子が生まれて一度もかけられた事の無い優しい言葉があちこちから聞こえた。
子供達がジュースを飲むのを見て自分も凄く喉が渇いている事を思い出した富士子は水道の水を手ですくって飲んだ。濡れた手は体育服に擦り付けて拭いた。
おじいちゃんとおばあちゃんが来てる人もたくさんいる。大人の人達が沢山いるシートもある。
( あの子が大切なんだ。)
( あの子のお母さんはあんな人なんだ。すごいお弁当。優しそうなお母さんだ。)
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