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「そうか…。それならば問題無いだろう。其方の部下達には夜の城と都の警護に見回りを命ずる。そして…其方を………」
将軍は一瞬言葉に詰まった。
そして一呼吸を置き
「其方を…余の側室として迎え入れよう」
最初、何を言われたかわからなかったタマモだったのであるが、将軍の言った台詞を理解すると同時に顔がほころび始めて来た。
そして
「誠か⁉ 誠でございますかッ⁉ 将軍様!!! 今の言葉に嘘偽りはありませんね!!??」
「も、もちろん嘘では無い。しかし、まずは娘達を送り届けて来てからだ」
「すぐに!! 犬神! 早く妾の屋敷に戻り娘達を連れてまいれ!! 狂骨!!! オマエは何故そんな所で眠っておるのじゃぁ!!! オマエも早く犬神と行って来い!! あ、あと妾の屋敷にある宝も全て持ってくるのじゃ!!! 早くせんか!!!」
「は、はい!!」
身体は再生しているが未だに意識を取り戻していない狂骨を、犬神は脇に抱え部屋を出てタマモの屋敷へと向かった。
「将軍様、妾の持っている宝も全て差し上げます。是非是非、お城や都発展の足しにして下さいまし」
「あぁ、ありがとう…」
「それにしても…やったのじゃーーー!!! 遂にやったのじゃぁ!!!!! 遂に、遂に将軍様のお近くに…。500年…本当に長かったのじゃ…。ウウウゥゥ……将軍様…愛しておるのじゃぁ~~~!!!」
「げふッ!」
タマモは泣きながら満面の笑みで将軍の胸元へ飛び込む。そして将軍はその勢いに押され壁に背中を強打し負傷した。
そんな2人の様子を見ながら、もう護衛は必要無いと悟った侃玄衆達は1人、又1人と部屋から出て行く。
その後、侃玄衆は城の中庭で集っていた。
「…まさか、狐が将軍殿に惚れていたとは…」
「全く想像だにしなかったなぁ」
「…」
「まぁ、平和になって良い事なんじゃないか? 娘達の失踪の真相も知れたし」
「まさかの侃玄衆解散か?」
「それは無いだろう。妖は百妖夜行だけでは無いからな」
「うん…それよりもさぁ、百妖夜行・狐の攻め入り…か。攻め入りでは無く…あれは狐の嫁入りだな」
「「「「「「ハハハッ!!! 確かにそうだな!!!」」」」」」
侃玄衆達は珍しく全員で笑い合う。
そんな彼らの頭上からは、眩い太陽が顔を覗かせているのにも関わらず、シトシトと静かな雨が降り注いでいた。
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