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妖狩り
月も星も姿を現さない漆黒の夜
「ギャアアアアアア‼」
突如、耳を劈く断末魔が辺り一面に響く。
その聞いた者を震え上がらせる様な叫び声を上げた物は、全身から夥しい血しぶきを上げ地面に背中から倒れこんだ。
「…無に還るが良い」
その倒れた物の前に立つ男は右手に持つ刀を左から右へと振り、刃に付いた血を払う
そして左腰の鞘へとその刀身を収めた。
チン…
その鞘と鍔がぶつかり合う音がした瞬間、倒れていた物は乾いた土の様に身体が崩れて行き
やがて塵となり消えた。
「任務…完了…」
そして
刀を持つ男も又、闇夜に消えた。
1500年代後期のとある国、この国では太陽が沈み辺りが暗くなると同時に人里離れた山奥で人とは異なる物が現れる
と言う噂がある。
普段は山の中で動物等を襲いその血肉を喰らっているのだが…極稀に町へとやって来てその牙を人々に向ける事もあると言う為
腕に覚えのある浪人や侍が退治の為と刀を持ち、闇夜に赴いた事もあったのだが、結局誰しもが無駄足を踏んだだけであった。
本当にそんな物がいるのであれば人々にとっては途轍も無く恐ろしい存在なのだが…
それは人がたくさん居る場所には滅多に姿を現さないので、人々の間に親が子の躾として教える様に『恐ろしい出来事』として語り継がれる事も無い。
語られるのはただ、その様な物がいる と言う噂だけ。
その為人々の中では、その存在は自分とは決して出会う事が無い、自分の前には絶対に現れ無い非現実的な物と言う考えが根強く芽生えていた。
しかし、人々は知らなかった。
その物達は確かに存在し、そしてその犠牲となり姿を消す者が、1人、又1人と日々増えている事を。
人々は『自分』やその近しい者の前には現れないであろう、その存在を
『妖』と呼んでいた。
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