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大学時代の友人、山本君は出版社で編集者をしている。彼からもらった年賀状に、書かれていた内容が気になった。印刷されたイラストと文章の横に手書きで、『環境が激変した』と書かれている。
小さな字で小説担当の文芸部から、マンガ雑誌の編集部に異動したとか、書いてあったが、文字が小さ過ぎて、一部が読めない。
僕は寝室のデスクのレターケースから、山本君から過去に来た手紙を探す。白い封筒を手にした。暑中見舞いだ。
約四か月前になるが、暑中見舞いの手紙では、赤ちゃんが生まれて喜んでいた。裏面が家族三人のスリーショット写真で、山本君は、ふわりと優しい笑顔だった。
便箋は入ってない。暑中見舞い名目で、赤ちゃん自慢をしているみたいだ。
ふと、少し前のことに思いを馳せる。年賀状印刷では、僕も負けじと、嫁さんとの2ショット写真を撮った。年賀状に裏面印刷を業者さんにお願いした。嫁さんと一緒に、百枚以上自撮りをしたのだ。嫁さんが写真選びをして、嫁さんが気に入った奇跡の一枚を使った。
山本君に、何かがあったのだろうか。彼は、年賀状に悩みを書くタイプではない。かなり心配になった。
寒中見舞いとして、正月明けに往復はがきを出した。
寒中見舞いに往復はがきを使ったのは、苦渋の策だ。僕が会社員をしながら、趣味で小説を書き続けていることも、それとなく、書いておいた。僕を使って欲しいと直球で伝えるようで、いやらしからだ。一人称でコメディ小説を書いていることなどを、ネットの小説投稿サイトでのペンネームも、しっかり書いた。
読み返せば、僕のことばかり書いてある。かなり、長い文章になってしまった。
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