19人が本棚に入れています
本棚に追加
「もちろんですよ。こんばんは。コタロウ。いつも元気だね」
コタロウと長島さんの飼い犬、リンちゃんが、じゃれあっていた。仲良しの犬だ。飼い犬のコタロウのリードを引っ張り、公園を後にした。アスファルトの道路に出れば、看板が立っていた。
〈愛犬家のみなさまへ。犬の落し物は、拾って帰ってください〉
当然でしょう。コタロウが違う公園で小をして、人畜無害な消毒スプレーをかけていたの。そうしたら、公園でウォーキングしてたオジサンから、「水で洗い流してよ」って注意されたの。
犬用消毒スプレーを、知らない人多いみたい。それからは、ペットボトルに水をいれて、その後、消毒スプレーをするようにしてる。コタロウが消毒スプレー飲んだら、気になるもの。
道路では公園が名残惜しそうに、コタロウが振り返っている。あとは家に帰るだけ、歩くスピードも遅くなっちゃってる。犬にとって、感情を示す大事な、大事な尻尾もげんなり下向き。
電柱がある度、コタロウが止まって、わたしはペットボトルの水と、消毒スプレーをかけてる。
家に戻ればポストを確認する。市役所からの封筒があった。私は首を傾げながら、開封する。コタロウの狂犬病の予防接種を受け忘れてませんか、行き違いはご容赦ください、そんな内容だった。この前、しっかり犬猫病院で狂犬病の予防接種は済んでます。
「狂犬病の予防接種代、本当はコタロウが払うんだよ。コタロウのためにしてるのに、診察台の上であんなに嫌がって」
人間の言葉が分からないコタロウは、舌を出して、はあはあ息をしているだけ。(完)〉
市役所から来る手紙は、大抵、良い報せか、悪い報せかのどちらかだ。最近、僕も何通も市役所から“重要書類在中”とスタンプが押された、手紙が何度か来た。
電話で尋ねたら、一昨年の市民税を払い忘れていた。会社から、給料で天引きされてる、と思い込んでいた。
急いで市役所に払いに行くことになったが、嫁さんの軽自動車税も払ってくるよう、ついでに頼まれてしまったのだ。
窓越しにも、小鳥のさえずりが聞こえる。もう朝になっていた。私は急いで編集部に、インターネットで2作品を送信した。徹夜なので日課である嫁さんと二人でのウォーキングは、手短に済ませた。
最初のコメントを投稿しよう!