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会社が副業は許可制だからだ。原稿料は辞退したが、出す、出さないのやり取りが続く。
嫁さんは、立ち上がっていた。キッチンで、電気ポットで、インスタントのジュースを作っている。
しかし、雑誌名を聞いて戸惑いを感じる。彼は“過激表現有り”のマンガ雑誌編集者だったのだ。
テーマは“過激表現有りのお色気っぽい”のだが、そういう作品は初挑戦になる。
「ほら、山本君。原作の依頼があったんだ。僕に。ちょっと出かけてくる」
「イミ分からないけど?」
「出版社で働いている山本君が、僕に漫画原作の依頼をしてくれたんだ」
「良かったね」
嫁さんが頬を上気させながら、僕の手を握ってくれた。
「じゃあ、本屋さん行ってくる」
「え? うん、行ってらっしゃい」
資料用の雑誌が必要だ。電話を切ると急いで近所で、いきつけの書店に走る。山本君が編集者をしているマンガ雑誌を探して、手に取る。顔なじみの男性店長さんに告げた。
「買いますので、立ち読みさせてください」
肩で息をしながら、“条例により、18歳未満の方の閲覧、購入は禁止されております”と、札が立っている本棚の隣に置いてあった。食い入るように読みふけった。ストーリーの流れを少し無理しても、過激表現を求める作品が多いようだ。起承転結で言う、起の部分に過激表現を持ってくるスタイルだ。表紙も過激だ。
コメディ作品もあって、安堵した。
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