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月明かりの下、走って帰宅した。どうも、心が焦っているようだ。寝室で、眠りについている嫁さんを起こさないよう、自室に入る。パソコンのワープロソフトを起動させた。私に実際に起きた出来事をヒントにしつつ、一人称で小説を書き始めた。大人の男性と女子生徒の物語だ。
<【題名】
『夜の公園で出会ったサラリーマンと女子×生』
【本文】
俺は三村哲夫、ごく普通の会社員だ。大晦日も近くなったある夜、日課としている夜の散歩に出かけた。日頃のたまっているモノを解消するためだ。白い息を吐きながら、公園のベンチに腰かける。人気のない周囲を見渡すと『公園内禁煙』と書いてある看板が視界に入る。
しかし、何ごともバレなけらば良いのだ。タバコに火を付ける。煙が渦巻いていた。
人目を憚るように、セーラー服に身を包んだ女の子が俯きながら、俺に向って歩いてきた。公園の照明に照らされたその子の姿は、幼さの中にも初恋のあの人と重なって見えるモノがあった。
彼女が持つスクールバッグに書いてある学校名は、俺が卒業した中学校だ。ふと思い出せばあのころは、隠れていろいろと悪さをしたモノだ。彼女は唇の端を上げながら、激情を抱え込んだような声音だ。
「おじさん、こんばんは。ねえ私、今月のお小遣い全部つかちゃったの……イケナイ子でしょう。でも欲しいなぁ」
「うーん? 本当はイケナイことだけど、誰にも言わないって約束できるなら、おじさんが一万円上げよっか?」
「ありがとう、おじさん! もちろん二人だけの秘密にしちゃいます」
今時の中学生とは、こういう感じの子を言うんだろう。ちゃっかりしている。イケナイことだと思いつつも、一万円札を受け取る。彼女は、照れくさそうに、こくん、と頷く。
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