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彼女の中学が冬休みで塾の冬期講習から夜、公園の前にあるバス亭から帰宅することを知った。毎晩マンションまで送っていくことを俺から申し出たのだ。
ちなみに、竜夫にはもう一人小学六年の男の子がいる名前は海斗君だ。元旦より前に、お年玉を渡したとバレると、海斗君が、不公平に感じるだろう。
バス亭から、帰路に就く、疲れた顔の兄貴が街灯に照らされていた。近づき、小声で事情を話し、裸銭のまま海斗君の分のお年玉、五千円を渡しておいた。めいやおいに甘い俺が悪いのだ。
お年玉を前借りした紗綾歌ちゃんを怒らないとも約束してくれた。義理の姉である幸子さんに気を使わせると悪いので、足早にマンションを出たのだ。
すぐ近くにある自宅に戻る。うちの子たちはまだ小学生だが、お正月の兄夫婦からの子どもへのお年玉の合計は、一万五千円になるだろう。まあ、親戚同士の暗黙の了解ってやつだ。
ちなみに中学生の頃にした悪いことは、俺が初恋の人に対してだ。小テストで答案をカンニングしたことだ。今でも恥ずかしいと思っている。
紗綾歌ちゃんは初恋のあの人、そう、小夜子と名前の読みが似ているのだ。真面目な紗綾歌ちゃんが警察官をしている兄貴に言ってくれたのだろう。
次の日兄貴から、「禁煙の公園でたばこを吸うな」と電話があった。寒い中たばこの煙がガツンと脳を刺激するのが、快感なのだ。二度と禁煙の場所では、絶対に吸わないことを初詣で誓った。
その後、紗綾歌ちゃんは、第一志望の高校に合格した。お礼の手紙がきて、僕も自分のことのように大喜びだ。(完)>
終わった……。正月休みに親戚一同が、集まったことを思い出しながら書いた。親戚で、クリスマスに販売のゲームを買いたい子がいた。お年玉を現金書留で十二月中頃に、郵送して上げた。
我ながら、かなりの傑作だと思う。男性の一人称で書き、主人公に思っきり、自己投影をしたのが良かったのだろう。この作品だけだと規定の文字数に達しないのだ。
リビングに忍び足で音を立てないよう歩く。インスタントコーヒーを作った。
全力を出し切って作品を書いた後に飲むコーヒーはうまい。適当な椅子に座り、分厚いカーテンの隙間から、仄暗い光が差し込む。壁時計を時計を見れば、まだ締め切りまで時間がある。
もう一作品を今度は女性の一人称で書くことにした。モデルは嫁さんだ。
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