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「寄り道」 ~ 白い家
「寄り道」~ 白い家
長い放浪の末に辿り着いた場所は、白い家だった。
ああ、どうして僕はここに立ち止まったのだろう。
こんな家は、家族住まいでなく、
きっと君のような人が、一人で僕を待っているのだと思った。
長い時間、僕が来るのだけを待っている。
そんな君が住む家だ。
僕が入ると、
「遅かったわね、寄り道してたの?」と君は尋ねる。
「ああ、ずいぶんと長い寄り道だった」と僕は答える。
何十年にもわたる寄り道だった。
僕に何があったのか、君は尋ねもせず湯を沸かし始める。
テーブルに仲良く配されたティーカップを眺めながら、
さて、どこから話そうか?と考える。
長かった僕の寄り道の話に、
君は笑顔で耳を傾ける。
そして、
「結局は、君の所に戻って来たよ」
最後にそう言う。
そんな素敵な時間を過ごすこと・・・
そんな想いを抱えながら、
僕は白い家の前を通り過ぎていった。
(了)
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