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ああ、そうか・・
海は最初はとても小さかったのだ。
子犬がすぐに大きくなるように、
海も飼い始めたときは小さく可愛くて、
おそらく妹の手の平にも乗るサイズで、
きっと誰かの涙のように小さく、
家族の誰も、妹が海を飼っていることなど気づきもしなかったのだろう。
妹は海が大きくなっても部屋から追い出そうとはしなかった。
僕が戒めても、母が文句を言っても、
ひたすら海を守っていたのだ。
海が通った跡は塩や海草でべっとりしていたが、
妹はそれを綺麗に拭き取り片付けていった。
僕も海が外に出ようとするのを止めようとしたが、
海は誰かの涙のように塩辛く、
柔らかく掴みどころがなかった。
だが、当の飼い主である妹は海を引き止める気配はなく、
その日の午後、海と二人で出かけていった。
本当の海に向かったようだった。
長い時間が過ぎ、
妹は一人で家に帰ってきた。
妹は、海とお別れをしたらしく、
今ではフリーズしなくなったTVゲームで楽しそうに遊んでいる。
(フリー画像)
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