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「約束」
「約束」
遠い昔
君と約束をした
けれど
僕に流れていた時間と
君の横をすり抜けていった時間は
あまりに違いすぎた
*****
「近くにこんな神社があったんやね」
「うん、最近、見つけたんや」
僕たちは手を合わせたあと、
自然と顔を見合わせた
「ずいぶん長く祈ったなあ・・」
僕がそう言うと
「何を神様に祈ったん?」
君は僕に訊ねた
僕が言い渋っていると
「教えて、教えて・・」
そう繰り返し君は微笑んだ
僕は小さく
「この先もずっと君と居れますようにって・・」と
恥ずかしいセリフを言った
「えっ、そうなん?」
驚いたような顔で君は言った
「おかしいか?」
「だって、私、『束縛』されるのが嫌いやって、いつも言ってるやん」
「それって、束縛なんか?」
確かに彼女はよく口癖のようにそう言っていた
束縛されるのは嫌い、と
「そうでしょ?」
「そやけど、僕のこと、好きやって言うてたやん」
「今、好きなんと、将来まで好き、は別物やん」
他愛もない会話がずっと続いた
結局、彼女が折れることになり
「ほんま、しゃあないなあ、これからもずっと一緒にいてあげるわ」
そんな大切な言葉を僕は手にした
「約束やからな」
そう僕は小さく言った
*****
僕の長い一日は
彼女にとっては半日にも満たない短い時間で
流れる時間と共にその間隔はひろがり
同時に二人の心の距離も遠のいた
気がつくと彼女は僕よりずっと大人で
僕はいつまでも聞き分けのない子供のままだった
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