アチラのお医者さんと妖刀つかい5

1/1
51人が本棚に入れています
本棚に追加
/433ページ

アチラのお医者さんと妖刀つかい5

「――じゃあ、これで失礼します。ごちそうさまでした」  「影法師」を出ると両手をそろえて上品におじぎをする坂上さんに、先生は 「いえ、とんでもない、こちらこそ。時間をいただきまして――それに、もうしわけありません。どうも迷惑をかけることになったようです」 「いえ、『これ』がそちらの関係でないならいいです。あたしの方で、かってに対応します」  なんのこと?と思っていると、道路から、わらわらと顔色の悪い人たちの一団がこちらにむかってくる。 「……あたしがねらいみたいですけど、関係がないなら『こわした』ってかまいませんね?」  そう少女は言うと、前のようになにもない宙から抜き身の日本刀をとりだした。  はじめて見た先生は 「ほお!闇丑光(あんのうしみつ)ですか!?」  少女は刀をかまえると、おそいかかる人たちを次々となぎたおしていく。  そのようすは、まるっきりゲームの無双状態だ。28e03d62-7c8e-47e0-b78e-3c6e18a271fb 「――いやあ、たいしたものですね。新闇流(しんやみりゅう)かな?よい教師に習ったと見える」  のんのん先生は、その剣技に感心しきりだ。  けっきょく、坂上さんはおそいかかってきた十数人をすべて切りたおした。  人が切られたのに先生もぼくもそんなにあわてないのは、それらの「人のかたちをしたもの」のどこからも血が出ていないからだ。  これらは、ただの「人形」なのだ。 「……ふう。こんなところでしょう。それともまだ続ける気かしらん?」  坂上さんはだれにともなく問うたが、反応がないと 「じゃあ、あたし用事がありますのでもう行きます。――ごきげんよう。野々村先生、藤川くん」  刀を宙にしまうと、さっそうと去っていった。 (――カッコいい女の子だ)  のんのん先生は、少女が見えなくなると 「――べつに、わたしたちにはすがたを見せてくれてもいいんじゃないですかね?」  と、言った。  街路樹がゆれると、そこから下りてきたのは 「アヤツリツカイ……」  そう。見た目はただのかわいらしいリスだけど、実はかむのの裏で暗躍する強力なアチラモノだった。
/433ページ

最初のコメントを投稿しよう!