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アチラのお医者さんと妖刀つかい5
「――じゃあ、これで失礼します。ごちそうさまでした」
「影法師」を出ると両手をそろえて上品におじぎをする坂上さんに、先生は
「いえ、とんでもない、こちらこそ。時間をいただきまして――それに、もうしわけありません。どうも迷惑をかけることになったようです」
「いえ、『これ』がそちらの関係でないならいいです。あたしの方で、かってに対応します」
なんのこと?と思っていると、道路から、わらわらと顔色の悪い人たちの一団がこちらにむかってくる。
「……あたしがねらいみたいですけど、関係がないなら『こわした』ってかまいませんね?」
そう少女は言うと、前のようになにもない宙から抜き身の日本刀をとりだした。
はじめて見た先生は
「ほお!闇丑光(あんのうしみつ)ですか!?」
少女は刀をかまえると、おそいかかる人たちを次々となぎたおしていく。
そのようすは、まるっきりゲームの無双状態だ。
「――いやあ、たいしたものですね。新闇流(しんやみりゅう)かな?よい教師に習ったと見える」
のんのん先生は、その剣技に感心しきりだ。
けっきょく、坂上さんはおそいかかってきた十数人をすべて切りたおした。
人が切られたのに先生もぼくもそんなにあわてないのは、それらの「人のかたちをしたもの」のどこからも血が出ていないからだ。
これらは、ただの「人形」なのだ。
「……ふう。こんなところでしょう。それともまだ続ける気かしらん?」
坂上さんはだれにともなく問うたが、反応がないと
「じゃあ、あたし用事がありますのでもう行きます。――ごきげんよう。野々村先生、藤川くん」
刀を宙にしまうと、さっそうと去っていった。
(――カッコいい女の子だ)
のんのん先生は、少女が見えなくなると
「――べつに、わたしたちにはすがたを見せてくれてもいいんじゃないですかね?」
と、言った。
街路樹がゆれると、そこから下りてきたのは
「アヤツリツカイ……」
そう。見た目はただのかわいらしいリスだけど、実はかむのの裏で暗躍する強力なアチラモノだった。
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