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アチラのお医者さんと光るトカゲ13
「……そりゃ、あぶない目にあいましたね。
いやあ、ヨシノさんがなんとなく気になるというから見に行ってもらったんですけど、よかった。ありがとう、ヨシノさん」
「いえ、なにごとも無くてよかったです」
「ほんとうにありがとうございました」
ぼくがペコンとあたまを下げると
「そんな気にするようなことではありません。ながく生きているものがまだ年若いものを守るのは当然の責務です。
——こわかったでしょう?甘酒があるからお飲みなさい。こういう時はあたたかくて甘い飲み物がおちついてよいから」
さっきまで大男の頭にかぶりついてたなんて信じられないくらいひかえめな態度で、ヨシノさんは給仕をしてくれる。
もう首と胴体はきっちりと引っ付いて、つなぎ目も見えない。
ぼくはいれてもらった熱い甘酒をすすりながら先生に聞いた。
「——いったい、あの乱暴な男の人はなんなんですか?」
「そりぁ、鬼(オニ)です。ツノがあったでしょ?彼らのように二本ツノがあるタイプのウシオニはそのツノのあいだのところが急所なんです。そのことをヨシノさんに言っておいたのがよかった……それよりやはりあのウシオニはだれかから、この診療所に人間の少年がジェームスくんを連れてきたのを聞いていたのですね。これは問題です」
先生はすこし考えると
「……申し訳ありませんが藤川さん、わたしは今から往診に行くのですが、ごいっしょに来ていただくわけにはいきませんか?」
と、ぼくに言った。
「先生、だいじょうぶですか?」
ヨシノさんが心配そうに言うと
「なぁに。いくらオニでも、わたしがついているのに手を出すような、そんなバカなことはしないでしょう」
その言葉にぼくは、ハッとなった。
そうか、助手のヨシノさんでもあんなすごいワザを持っているんだから、のんのん先生はそれよりもっとすごいワザを持っているにちがいない。
こんなまっ黄ぃ黄ぃの髪なんだから、カミナリみたいな一千万ボルトの電気ぐらい放つのかもしれない。
それに確かにさっきはこわかったけど、ぼくはいったいジェームスに何があって、この先どうなるのか知りたくてしょうがなくなってたんだ。
「はい、行きます。つれてってください」
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