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アチラのお医者さんと光るトカゲ18
「彼らはピカピカした光りものが大好きで、その名のとおりとても頑丈な鋼鉄のような体で、せっせと地下から宝石を掘り出すんですよ。往診のときにわたしも女王のコレクションを見せてもらいました」
「じゃあ、女王のお気に入りの紫水晶もごらんになったわよね?」
「ええ。あの天然の大きな……まさか、あれが盗まれたんですか?」
「そう。だから今、ハガネアリたちは大騒ぎですよ。なにせ女王アリのコレクションのなかでもあの紫水晶は特に貴重で、一五〇〇万カラットぐらいあるものですからね」
一五〇〇万カラットって、想像がつかない。ぼくは聞いた。
「……あの、それってどれぐらいですか?」
「そうですね。五カラットで一グラムだから……三トンですか」
「三トン!そんな大きな宝石があるなんて知らなかった!」
「そりゃそうです。コチラの人間が掘り出したり見つけ出したりしている宝石というのはすべて、アチラモノが手にしたものの余り……カケラくずにすぎません。本当にいいものはコチラモノの目には触れないようになっているんですよ」
おどろいた顔をしているぼくに、先生はほほえみながら
「ほかの石油にしろガスにしろ、天然資源についてはなんでもそうです。一番良い部分はアチラモノがおさえています。人間は地球のことについてよく知っているつもりですが、なーに、本当のところはなにも知ってやしない。われわれコチラモノはアチラモノの生活圏の、実はおこぼれをあずかって生きているようなものなのです」
「女王アリはそんな特別大事にしていた紫水晶が盗まれたものだからいたくおかんむりで、働きアリたちが今、必死になって犯人をさがしていますよ」
「……しかしあんな大きな水晶を、しかもあの城塞のように警護の厳しい巣からよく盗み出しましたね。——犯人の目星はついているんですか?」
「聞いた話だと、盗みがあったその日に、ハガネアリの巣にワタリネズミのセールスがやってきたらしいですわね。女王アリにめずらしい青真珠や赤真珠を売りつけに来たみたい。ハガネアリは地中の宝石はいくらでも自分たちで採れますけど、海の中のものは採れませんのでね」
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