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アチラのお医者さんと光るトカゲ23
そのあいだにもシロタヌキは「グルルルルゥ」と不気味なうめき声をあげながら、今にもこっちに飛びかからんばかりだ。
なのに、先生はその様子をただ興味深そうに見つめている……そうか!余裕があるということはなにか本当に電撃攻撃みたいな必殺技を持っているにちがいない。
「先生!はやくあのおっかないのをやっつけてくださいよ!」
「……えっ、わたしですか?わたしにそんなことは出来ませんよ。わたしはただの非力な医者です」
「そんな!じゃあどうやってジェームスを助けるんです?」
なんてこった!ただの役に立たない金髪だったなんて!
「――ガルゥッ!」
すっかり逆毛立ったシロタヌキに追われて、のんのん先生とぼくは部屋の中
をおたおた逃げまどった。
「どうにかしてください、先生!」
ぼくが必死にさけぶと、先生は走りながら悠長に考えて
「そうですねえ……ああ、そうだジェームスくん。もう絶食は解きましたから。ものを口に入れてもかまいませんよ」
今そんな、治療の指示を与えてる場合ではないでしょ!この人はやっぱしどうかしてる。
「——だからその、いまあなたをつかんでいるモノを『食べちゃって』くれませんか?」
とたんにタヌキの顔色が変わって、ジェームスの顔をおびえるように見た、と思うやいなや、ジェームスは大きく口を開けて……そしてなんと、次の瞬間にはシロタヌキをパクリと飲みこんでしまった!
あとにはもう、いつも通りのちっちゃいジェームスがハネをぱたつかせて飛んでいる。
相棒が飲みこまれてびっくりしたスキを狙って、ヨシノさんの胴体がツノの間に棒を打ちつけてオニを気絶させた。
「……ああ、やれやれ。なんとか片づきましたね」
先生がタヌキに追われてころげた拍子についた泥をはらいながら言った。
ヨシノさんは
「こんなことは二度とごめんですよ」
と、ぼやきながらオニをしばる。
ぼくはそれをただ呆然と見て立ちつくす。
そこに
「ゲポッ」
ジェームスがちいちゃくゲップをした音が冷凍工場跡にひびいた。
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