アチラのお医者さんと光るトカゲ24

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アチラのお医者さんと光るトカゲ24

 次の日、コーポまぼろしに行ったらまだ診療所は散らかっていて、片づけちゅうだったけど、ヨシノさんはお茶を出してくれた。 adb30024-1e4d-44e4-9212-3bbdd7944ca3 「——ハネツキギンイロトカゲというのは前にも言ったとおり、月の光さえ浴びていれば栄養は確保できるので、本来ものを食べる必要はないんです。われわれの感覚だと、ふつうそうすると胃腸は退化するか少なくとも縮小すると思うんですけど、なぜだか、彼らのそれは逆に異常に発達してしまってね。ほとんど一種の異空間と化してしまっているようなんです。正確な調査はいまだなされていませんが、一説には、その奥の広さは地球の一個や二個ぐらいすっぽり入るぐらいとまで言われています。  そこにあのタヌキとオニは目をつけたわけですね。いくら三トンの紫水晶といってもジェームスくんなら一飲みですし、しかも彼自身はポケットに入る大きさですから、だれもあやしまない。見事な作戦でした。  しかし、そのあとは間の抜けた話です。ジェームスくんに紫水晶を飲ませてアリの巣の外へ持ち出すまでは良かったが、それを取り出すこと、つまり宝石を吐き出させることがうまくできなかったんです。彼らは無理やりに宝石を取ろうとして、あろうことかジェームスくんを傷つけたんです」  なんてひどいことを! 「まあ、それでジェームスくんは怒って逃げ出したんですね。ウシオニの話だと、シロタヌキは手負いのジェームスくんがたよるとしたらこの診療所だろうと思って、わざわざハクオウじいさんに化けてこの診療所に偵察に来たんです。  彼は、じいさんが長年のわたしの患者だと知っていたんですね。あの老人は話好きで誰とでも話をしますし、年齢のせいで多少、記憶があやしくなってきていますから、あとでつじつまが合わなくなってもあやしまれにくい。  そしてシロタヌキはあなたがジェームスくんを連れてきたことを知った。彼は慎重にことを進める気だったようですが、なにせウシオニというのは短気で考えが浅いからね。まあタヌキを出しぬいて自分一人でうまくやろうという気もあったんでしょう。彼には黙って次の日の朝、わたしを脅しに来たんです。  そしてそれがうまくいかないとなるとあなたを誘拐してどうにかしようとした。しかしそれも失敗し、今度はちゃんと二人で考えて、わたしの留守を狙ってジェームスくんを強奪しに来たのです」  先生はそこまで語るとお茶をひとすすりした。  ジェームスとぼくが出会ったうらがわでそんなややこしいことがあっただなんて、びっくりだ。
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