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アチラのお医者さんと光るトカゲ25
「きみも大変な目にあったんだねぇ」
思わず頭をなでるとジェームスは心地よげに眼を細めた。
「シロタヌキが言っていた『あのかた』ってだれでしょう?」
「さて。ウシオニに聞いても知らないと言っていましたね。たしかにシロタヌキが考えたにしては今回の盗みの手口は凝っています。うらでなにかアドバイスをした存在がいるかもしれませんね。まあ、そのあたりは今ジェームスくんのおなかの中にいるシロタヌキに聞いてみないとわかりませんが」
のんのん先生は、ぼくにおなかをなでられるジェームスをほほえましげに見て
「——いや、しかしあのシロタヌキは化けるのが上手でしたね。わたしにもまるでわかりませんでしたよ」
——えっ?
「そんな!ホクロの位置がおかしいって言ってたじゃないですか!」
ぼくは思わず声を上げた。
「ああ、あれは『はったり』です。ハクオウじいさんがそんな悪さをするわけがないと知ってましたから、わかっているふりをすれば相手の方がボロを出すだろうと思ってあんなことを言ったんです」
お茶をすすりながらしらっと答えるのんのん先生に、ぼくはまいってしまった。
「先生はなんでシロタヌキに襲われそうな時でものんびりした顔をしていたんですか?こわくなかったの?」
「こわかったですよ。でもなんとかなるだろうとは思ってました」
「どうして?」
「わたしはあなたに代金はいらないといったでしょう。それには理由があるんです。わたしはこの診療所でアチラモノの治療をしても直接お金をもらうことはありません。しかしその代わりに彼らはわたしにツキをくれます」
「ツキ?」
「つまり幸運とでも言いましょうか。わたしが診察のあと競馬に行ったり、宝くじを買いに行ったりすると『だいたい』当たるので、そのお金でわたしは生活をしています。ここのところそんなツキをたいして使わずとっておいたんで、なんとかなるだろうとは最初から思ってました。……まあ、ジェームスくんのすがたを見たとき、ぱっとひらめいたからよかったですよ」
ハッハとわらうのんのん先生に、ぼくはそれならそうと初めから言っておいてよ、と文句を言いたくなった。シロタヌキに追われてすごくこわかったんだから。
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