アチラのお医者さんとその師匠2の1

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アチラのお医者さんとその師匠2の1

 次の日は土曜日だったから、ぼくとジェームスは朝からのんのん先生の診療所に向かった。  先生が昨日言ってたぼくの見守り役ってだれなのか気になってたし、いま街で進められているという兄弟子の悪だくみについても、こまめに情報を仕入れておきたかったからだ。  コーポまぼろしに着くと、その前で、こまったようにきょろついているおじさん……中年男性がいて、目が合った。 「――ああ、おぼっちゃん。先日はお世話になりました、ありがとう存じます」  丁寧にあいさつしてくれる土気色(つちけいろ)のおじさんは、しかしぼくには見覚えがない。 40cea97f-2e4d-47fa-a260-4a81cb594c55「ええっと……あなたは?」  ぼくが警戒しながらたずねると 「あなたに『核』を作っていただいて、すっかり元気になりましたです、はい」  ああ、そうか!ちょっと顔が変わってるからわかりにくかったけど、この人……いやこのものは式神の一種だ。  つかっているのは、近所のマヨイガだ。マヨイガは家の形をしたアチラモノで、ジェームスとぼくはのんのん先生におともして、その体のなかに入ったことがある。  エネルギーの中心……魂といってもよい核を、鵺郎(ぬえろう)博士操るフェイク・ヨウコと妖刀・村雨に傷つけられたため、その治療をのんのん先生に依頼しにきたんだ。  そのときの使いが、この式神だった。(式神は、用事があるたびにマヨイガがつくりなおすから、毎回ちょっとずつ姿が変わるんだよな)  ぼくはそのとき、壊れた核(先生の亡くなった友人が描いた肖像画)のかわりとなる絵を一枚描いた。(先生やヨシノさん、それに飛ぶジェームスのすがたをとらえた力作だ!)  その絵を新たな核としてマヨイガが元気になったのなら、ぼくも筆をふるった甲斐があったというものだ。    式神は 「今日は、のんのん先生に往診をお願いしに参ったんですが、あいにくご不在のようでして……」  いないの?ヨシノさんも?そりゃいけないね。こんな朝から、どこへ行ったんだろう?  もしかして、兄弟子の件でなにか動きがあったのかな?そんなおもしろそ……いや、大事なことには、助手としてちゃんと関わっておきたいんだけど。  どうにもしてあげられない。  式神が 「……こんなところで立っていても物騒ですね。最近はどうも不審者が多ございまして」  と、不安げにあたりを見わたすから 「ここは日本だよ。道路にただ立っていて襲われるなんて、そんな治安のわるいこと……」  って、わらってたら
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