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アチラのお医者さんとその師匠2の4
お師匠、そしてジェームスとぼくは式神に案内されてマヨイガにたどりついた……けど
「あれぇ?」
様子がまるで変わっちゃったよ。
たしかに前来たとき、ぼくが「核」を変えると家全体が新しくリフォームされたみたいになったけど、規模自体はふつうにこじんまりとした建売住宅のままだった。なのに、今度はちょっと小高い土地の上に、とても大きなお屋敷……洋館になっている。建物どころか敷地まで広くなっているのが、びっくりだ。
「坊ちゃんがたのおかげで元気を取り戻して、ここまで大きくなったんですが、居候の具合が悪くなったのに合わせて、あるじの体調も崩れてしまいました」
そういや屋敷の規模は大きくなったけど、くたびれてるな。敷地の植木も、まったく手入れが行き届いていない。このままだと、また廃墟みたいになってしまいそうだ。
くんくん……なんだかみょうな匂いもする……おかしな具合だ。
師匠は、目をすがめて屋敷を望診(ぼうしん)すると
「ふうん……これはだいぶ瘴気にあてられたな。悪いものを食って腹を壊しているようなものだ」
診立(みた)てる。
「さようでございます。ささっ、どうぞお入りください」
そう言うと、式神は建物の扉を開けた。ギ―ッと、きしんだ音がした。
内部に入ると、そこはまるっきり西洋のお屋敷だった。前に入ったときと全然ちがう。広い玄関と応接間、そしてその奥には大きな階段……映画に出てくるような古い金持ちの邸宅だ。
階段の上の壁には大きな肖像画が……って、あれ?あの絵に描かれている子って、もしかしてぼくじゃない?油彩の太いタッチで描かれているよ。
「あなたさまは、我が家の再構築者です。あれぐらいの顕彰は当然です」
式神の、なぞのドヤ顔に
「絵を飾るなら、前にぼくの描いたのがあるでしょ?」
言うと
「めっそうもない。あなたさまに描いていただいた核は、奥の間に厳重に保管しております。前回のような間違いがあっては大変です。その代わりに、あなたさまのかたちをかたどらさせていただきました」
うーん、なんだかなぁ。おおぎょうだな。
「――ほう、馬子(まご)にも衣装だな。いかにも家来に支えられるだけの『あほぼん』タイプの領主に見える」
にやつく師匠の冷やかしが、照れくさい。
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