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アチラのお医者さんとその師匠2の6
「「キィキィーキィキィキィ」」
ほんとうにコウモリがいた。
それも、地下の意外と広いスペースに群れを成していっぱい……
って、あれぇ?あの子たちは見覚えがあるよ。というか、前にぼく、彼らに襲われたことがある。彼らこそ
「――ほう。ムラガリチスイコウモリか?こんな街なかにめずらしいな」
そう。住んでた山の洞窟が崩れちゃったとかで、引っ越し先を探していたコウモリの群れだ。
そこをあの不届きリスのアヤツリツカイにつけこまれて、地下鉄線路に住む大蛇のアカカガチにケンカを売るなんて無謀なことをして、ひどい目にあったかわいそうなものたちだ。
のんのん先生が仲介に入ってなんとか救い出したんだけど、そのあといい引っ越し先を見つけられたのかどうか……そういえば、聞いていなかった。
まさかマヨイガのなかに引っ越してたなんて、知らなかったなぁ!
「のんのん先生の紹介で。はい、間貸ししております」
もおっ。先生ったら、ぼくに一言あってもいいだろうに。わすれてたんだな。
まあ、いいや。知らない仲じゃないし
「やあ、コウモリさ……」
声をかけようとしたら
「――危ない!下がれ少年」
お師匠がぼくの腕を引っ張ったそのあとに
グガッ!
コウモリがかみついて、えぐりとられたような傷跡が石床についたよ。
「えぇっ!?」
ひどいなぁ!恩を着せる気はないけど、アカカガチにつかまってねっちょり固められたのを剝がすのに、ジェームスやぼくも手伝ったんだよ。
「すま、ねぇ。子(お)ども」とか言ってくれたのにさ。
ちょっと恩知らずじゃない?
ぼくがプンスカする横で、師匠が
「……異常とはこれだな。たしかに、部分的に正気を失っとる」
えっ、どういうこと?
よく見ると、ムラガリチスイコウモリの群れは二手(ふたて)にわかれているみたいだ。
一方の群れ(ぼくを攻撃してきたほう)が、もう一方の群れを追いまわしているように見える。
どういうこと??
たしかのんのん先生によると、ムラガリチスイコウモリは群れ全体でひとつの個性と言ってよい存在なんだと聞いたよ。それがふたつにわかれて仲たがいするなんて。
自分と自分がケンカするなんて、そんなばかなことある?
金髪の麗人は、いつのまにか手づかみでつかまえた一羽のコウモリ、その眼を天眼鏡(ルーペ)でじっと観察している。
「……こりゃウイルス性疾患だな。狂犬病に似ている……」
「きょうけんびょう?」
それって、たしかワンコがかかる病気じゃないの?
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