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アチラのお医者さんとその師匠3の3
白衣の麗人の攻撃にシロゴヘイたちはひるんだが、さっきと違って人数も多いからか退(しりぞ)きはしない。
なかなかの混戦だ。
「ーーはっ、紙細工どもが!数が多いな。とはいえ、使い捨てのメスならいくらでもあるぞ!」
そう言って、腰のバッグから次から次へと小刀を取り出しては投げつける。まるでマジシャンみたいだな。
シロゴヘイたちもすっかり算を乱す。
そのすきに逃れようとした行者だったが、さすがの彼も疲れていたのだろう。そばにいた敵の攻撃を左の腕(かいな)に喰らった衝撃で、レンレンを落としてしまう。
「しまった!」
レッサーパンダ・ルックのこどもを抱き止めたシロゴヘイが、一散(いっさん)に退却する。
「いかん!童子!」
行者は慌てるが、もう体力が続かないのだろう。追うことが出来ない。
護法童子も立ちふさがる白装束に阻まれて進むことが出来ない。
結局、レンレンはシロゴヘイにさらわれていってしまった。「――貴様!」
呼吸を整えた行者は、お師匠をにらみつけると
「なぜあの子を救わん!?貴様ならば、あれぐらいの相手、なんとでもなっただろう!」
怒髪が天を突く。
やはり、行者はこの金髪の麗人をよく知っていたようだ。
師匠は、しかし冷ややかで
「その論理は俺にはわからんな、行者。本来ならば、先の取引でおまえとの関わりは完了している。今の手助けは、この少年の求めに応じてのいわばボランティアだ。礼を言われることはあっても、不満を言われる筋合いはない。
それに、俺でもあの大勢のゴヘイ相手に単独で飛びこんでこどもを回収するのはむずかしいぞ」
そのつれなさに、行者はまだ文句を言いたそうだったが、飲みこんで
「――くっ!まさか中途であんなものに絡まれるとは思っておらなんだ。この街の異常のせいだ!」
師匠をにらむ。
行者はまだ息荒く苦しげだが、ルンルンをしっかりわきに抱えたままだ。
白黒もふもふ坊やは眠ったままらしい。
寝顔はかわいいんだけど、これで躊躇なくぼくの手足を落とそうとするんだから、困っちゃうよ。
ぼくは
「行者さん。言ってたとおり、ルンルンとレンレンを救い出したんだね?」
たずねると、
蓬髪の修行者は
「なにが救い出しただ!また連れていかれた!」
大声で怒鳴った。
こわいってば……というか、自分にすごく怒っているんだな。
「あのガキは、わしが必ず救い出す!」
その気迫あふれることばに、
お師匠が
「救い出すって、あのものがどこに連れて行かれたかわかるのかね?」
ちょっと、あざけるように言った。(いやなもの言いだ)
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