アチラのお医者さんとその師匠3の4

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アチラのお医者さんとその師匠3の4

「わからん!この街の呪的防衛に、わしは通じておらん!」  大声で、どうにもならんと宣言した。 「……あなたならわかるんじゃないの?」  ぼくがお師匠さんに問うと 「――そうさな。あのシロゴヘイたちがもどるところは、すなわちこの街の免疫システムの中枢よ。人体における骨髄のような場所だ。ただ、それが今どこにあるのかは俺も知らぬ。それは当代の医者……のんのんの担当だ」  シロゴヘイ……破れた紙切れを、興味深げにバッグに入れながら言う。 「じゃあ、先生を探して……」  ぼくの願いは、しかし 「いや、やつを探す余裕はあるまいよ。もたもたしていては、免疫に異物と判断されたあのレッサーパンダは滅却される」  あっさり退けられる。 「そんなの!いけないよ」 「そうだ!いかん!おぬし、なんとかできんのか?」  行者もさけぶと、  師匠は 「そうさなぁ……なにせ、この街の防衛機構そのものに挑むことになるでなぁ。タダで動くわけにはいかん」  けちくさいな。  すると行者が 「……わしが依頼しよう。おぬしの力を借りたい」  即断で、頭を下げた。  めずらしい。言っちゃなんだけど、この態度の大きい行者が人に頭を下げてたのむなんて、そんなイメージなかったよ。 「ほう?よいのか」 「余裕がない。あの子を救い出すのに協力してくれるのなら、わしもそれに応じておまえの協力をしよう」 「ほう。先の取引以上にか?」  取引って、どういうこと?なにか、もう約束してるのかな? 「――以上だ。わしのすべてをかける」 「すべてか……それはよい。うむ、契約更新だ。――ならば、さっそく行くとするか」  そう言うと 「……おい、起きろ」  しばられ眠るルンルンを、蹴突いて起こす。 「こどもを蹴るなんてやめて」 「うん?ああ、人間だったな、これは……いや、猿轡はそのまま噛ませていろ。騒がれても困る」  言うと、ペンペンと頬を叩く。(だから、こどもへの扱いが荒いって!) 「――おい。起きるんだ、ルンルン」  目ざめた幼子は、お師匠の顔を見て興奮するが、さるぐつわをされているからなにを言っているかはわからない。f3608f5f-76b5-4f19-bc52-bd35f9b3d272「やかましい、だまっていろ」  不思議だな。師匠が言ったとたん、ピタッと黙ったよ。  たしかにこの人には独特の威厳があるけどさ。ぼくに対する態度とちがいすぎない?
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