51人が本棚に入れています
本棚に追加
/433ページ
アチラのお医者さんとその師匠3の4
「わからん!この街の呪的防衛に、わしは通じておらん!」
大声で、どうにもならんと宣言した。
「……あなたならわかるんじゃないの?」
ぼくがお師匠さんに問うと
「――そうさな。あのシロゴヘイたちがもどるところは、すなわちこの街の免疫システムの中枢よ。人体における骨髄のような場所だ。ただ、それが今どこにあるのかは俺も知らぬ。それは当代の医者……のんのんの担当だ」
シロゴヘイ……破れた紙切れを、興味深げにバッグに入れながら言う。
「じゃあ、先生を探して……」
ぼくの願いは、しかし
「いや、やつを探す余裕はあるまいよ。もたもたしていては、免疫に異物と判断されたあのレッサーパンダは滅却される」
あっさり退けられる。
「そんなの!いけないよ」
「そうだ!いかん!おぬし、なんとかできんのか?」
行者もさけぶと、
師匠は
「そうさなぁ……なにせ、この街の防衛機構そのものに挑むことになるでなぁ。タダで動くわけにはいかん」
けちくさいな。
すると行者が
「……わしが依頼しよう。おぬしの力を借りたい」
即断で、頭を下げた。
めずらしい。言っちゃなんだけど、この態度の大きい行者が人に頭を下げてたのむなんて、そんなイメージなかったよ。
「ほう?よいのか」
「余裕がない。あの子を救い出すのに協力してくれるのなら、わしもそれに応じておまえの協力をしよう」
「ほう。先の取引以上にか?」
取引って、どういうこと?なにか、もう約束してるのかな?
「――以上だ。わしのすべてをかける」
「すべてか……それはよい。うむ、契約更新だ。――ならば、さっそく行くとするか」
そう言うと
「……おい、起きろ」
しばられ眠るルンルンを、蹴突いて起こす。
「こどもを蹴るなんてやめて」
「うん?ああ、人間だったな、これは……いや、猿轡はそのまま噛ませていろ。騒がれても困る」
言うと、ペンペンと頬を叩く。(だから、こどもへの扱いが荒いって!)
「――おい。起きるんだ、ルンルン」
目ざめた幼子は、お師匠の顔を見て興奮するが、さるぐつわをされているからなにを言っているかはわからない。「やかましい、だまっていろ」
不思議だな。師匠が言ったとたん、ピタッと黙ったよ。
たしかにこの人には独特の威厳があるけどさ。ぼくに対する態度とちがいすぎない?
最初のコメントを投稿しよう!