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アチラのお医者さんとその師匠3の15
「気づいたか、トカゲ丸。いやホウイチ少年。そうさ。ここは映画館のスクリーン……映画の中だ」
老師が自らの特殊メイクを剥がす。その下にあったのは
「お師匠さん!?」
のんのん先生の師たる金髪の麗人だ!
えっ?なんで?なんでぼく(とジェームス)、こんな忍者になりきっていたの?
「……おまえは映画の最初から、俺の描いたシナリオとおりに誘導されておったのよ」
師匠がわらう。
えっ?どういうこと?なに?いったいなんのため?
「そりゃ、この平羅平羅城の天守閣……いや、この映画のフィルム内に保管された呪的システムの中枢……ソースにたどりつくためさ。そもそも、この場に侵入するためだけに、俺はあの櫓を設置したのだ」
そう言って、窓から遠くに見える櫓を指差す。
「あれらの櫓は映画の外の実世界で、俺がこの街の各所に密かに設置した装置を表している」
装置?
「ああ。その装置から実際に放たれている香料は、特殊な半物質でな。微細なため、この街の防衛システムにも認識されない。のんのんにもわからなかっただろう。 あの半物質は、コチラモノには影響がないが、アチラモノの免疫を狂わせる効果がある」
免疫を狂わせるって……まさか、あのマヨイガも!
「ああ。たまたまだが、あのマヨイガのすぐそばにもひとつ拡散装置を設置したからな。免疫が弱って、ウイルスに罹患したのだろう」
なんてことを!自分で病気にさせて、それを治療したの?
そんなの、お医者さんのやることじゃないよ!
「ああ。俺が治療するとは予定外だったな。貴重な研究サンプルにはなったが」
冷酷に言い放つと
「街中に香料を撒いたことで防衛システムが弱ったところに、幸運が重なった」
幸運?
「ああ。『運良く』さらわれたレンレンを追跡することで、システムの設置場所がわかった。加えて、一番難しいだろうと思っていた中枢への侵入が、苦もないものになったんだからな。それはすべて少年……おまえのおかげだ。まさか、おまえがシステムのマスター・キー……水晶を持っているとはな。
のんのんめ。なにを考えて、そんな大事なものをおまえに預けたのか?」
えっ?この首飾りって、ただのお守りじゃなかったの?
先生ったら、なにも言ってくれないんだから。
「後は全て、おまえに暗示を施してシステム中枢まで誘導しさえすればよかった。せっかくだから往年の忍者映画仕立てにしてみたが、どうだったかな?なかなか面白い筋立てだっただろう?」
ひどいよ!だますなんて!
観てるぶんにはいいけど。実際にやるのはいやだよ!
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