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アチラのお医者さんとその師匠3の18
「――さらばだ、ふたごたち」
「「きゃ――――――っ!!」」
冷酷な言葉とともに盛る火に落とされるふたご。
「やめてくれ――っ!!」
絶叫する行者もむなしく、火だるまになるこどもたち……そんな!!むごい!
……って、あれ?
炎に包まれているふたりに、ケモミミがないぞ。そこにあるのは、パーマがかった髪の……
「あっ、童子!」
燃え盛る火の中、ルンルン・レンレンだと思ったそれは、制多迦に矜羯羅、二体の護法童子だった。いつのまにか入れ替わっていたんだ!
「おぬしら……なぜ?命じてもおらぬに……」
童子たちの動きは、行者にも予想外だったらしい。
燃え混じって一体の紅蓮となった童子たちのすがたは、まるでひとりの男の子のようで……
「……コウジ!?まさか!おまえか!?」
行者が目を見開くその前で、にっこりしながら消えていく。
兄弟子は、その様子にしらけたふうで
「――チッ。身代わりか?仏法系護法らしい捨身機能だな。くだらん。映画が間延びするじゃないか」
くだらないわけがない。
「ふたごをどこかに飛ばしたな?とはいえ、このシステムの外には出ておるまい。すぐに検索してやる。どっちにしろ、おまえたちだけではどうにもならん」
そう言って、宙に操作盤(コンソール)を出して探し始めた兄弟子の、頭上はるかかなたから
「――そうはいかん、この外敵が」
声がしたと思った、次の瞬間
「うぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉおぉぉおぉおぉぉおっ!!!!!!」
大音(だいおん)の鬨(とき)の声とともに、はるか最上階の天井を切り裂く……いや、天井があるあたりの空間そのものを、手にした刀で切り裂きながら「向こう」の世界から現れきたのは
「ガイコツムシャ!」
愛馬・鬼黒号にまたがって、鵯越(ひよどりごえ)もかくやとばかりの直滑降を見せるしゃれこうべの荒武者だった。
彼らは吹き抜けを落下するようにして大広間に降り立つと、金髪の麗人に向かって
「伽羅……貴様、よくも長年過ごした街に対して、このような不埒な振る舞いを!亡き師に対して恥ずかしくないのか!?」
(眼球のない)眼窩でカッとにらみつける。
兄弟子は
「死にぞこないのサムライか……またうるさいのが来たねぇ。長年と言われても、俺は過去の感傷にふけるタイプじゃないんだわ……しかし、おまえがここに侵入してきたということは……」
窓から外を見ると……あっ、櫓に火の手が上がっている。だれかに破壊されているようだ。
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