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アチラのお医者さんと妖刀つかい6
「やあ。ごきげんよう、のんのん先生、それにホウイチくん。こんなところで会うとは奇遇ですな」
「なにが奇遇ですか。わたしたちが喫茶店に入るまえから見張っていたくせに」
「チュルルルル!そう言うあなたこそ、ボクに気づいていたくせに素知らぬ顔をするとは悪いお人だ」
「あなたがなにかしてくるとして、わたしにそれを防ぐことなどできませんよ」
先生は、ため息をつくように言った。
「あなたが、ひとりでこれだけの数を動かしたの?」
ぼくの問いにも
「そうです。これだけの数の『人形』をいっせいに操作するとは、さすが『アヤツリツカイ』ですね」
リスは、ほっぺをふくらませると
「ほめられても、そんなにうれしくはないですな。せっかくの人形たちが無残にもこわされてしまいました。けっこう高いんですよ、これらは」
「なんで!?なんで、アヤツリツカイが坂上さんをおそうの?」
ぼくの問いに、リスは愛らしい目をくるくるさせて
「それは、無論あの少女にボクも被害をこうむったからですよ。
先生はご存知でしょうが、彼女に傷つけられたアチラモノはマヨイガや化け猫だけではありません。外聞がわるいので内密にしていますが、ウチのものもいくらかやられているのですよ……。
そんな目に会ってなにもしないとあっては、ボクのアチラ社会での面目が立ちません。それで、ボクみずから出っ張ってきたのですよ」
そこでアヤツリツカイはことばを切ると、しっぽを立てて
「しかし、なかなかどうして!強いですね、あの娘(こ)は!しかも、よりによって闇丑光とは!」
興奮気味にさけんだ。
「『あんのうしみつ』って?」
ぼくの問いにこたえたのは、やはり先生だ。
「……あの刀を打った刀工の名です。あれはかむの鋼……オリハルコン製ですから、たいていのアチラモノを切り裂くことができます。まちがいなくアーティファクトの逸品ですね」
かむの鋼って、あのアカカガチの指輪につかってたやつ!
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