51人が本棚に入れています
本棚に追加
/433ページ
アチラのお医者さんとその師匠1の10
「それに、なにせ彼は気まぐれですからね。じっとあなたについてまわるのは苦手でしょう」
それはそうだね。
なにせ、すぐいなくなっちゃうから「脱兎」って名前にしたんだもの。
「だからまあ、彼についてもらうのはやめました。それで、あなたの警護をどうしようかと……」
先生のことばに、ジェームスがくるくると飛びまわる。
自分がいるから大丈夫というアピールらしい。
ありがとう、きみは気の良いトカゲだよ。
のんのん先生は、ぼくの首にからむジェームスをじっと見ると
「……そうですね」
椅子に背もたれると、ちょっと解説してくれた。
「――むかしから、運が良い人間のことを『肩(かた)がいい』と言います。良きモノが肩につく、という考え方から来たことばです。『ツイてる』ということばの由来でもあります。あなたの肩にはいつもジェームスくんがついていますから、それで十分守られているといえるかもしれません」
へえ、そうなんだ!ジェームス、やっぱりきみはすばらしいんだね!
世界一たよりになるトカゲだよ!
……って、あれ?そういや「おまえはかたがいい」って、だれかにも言われたな。そのときは意味がわかんなかったけど……
そうだ、あのピンク鹿に乗ってた女の子!テルコヒメとか言ってたな。
「――ああ。あなた、あの姫にも会ったんでしたね。どうでした?まぶしくなかったですか?」
そうだね、ちょっとまぶしかった。ぼくとおんなじぐらいの年なのに、すごく威厳があったよ。
「そりゃそうでしょうね、まあ神ですから。……そうですか、こどもの姿でしたか?わたしが会ったときは、まぶしいだけでどんな形(なり)かまでは、わかりませんでした。やはり、あなたのほうがよく見えてますね」
あの子、神さまなの?いや、そりゃそうだろうなとは思ったけどね。ハクオウじいさんとかにも比べても、尊(とうと)げなムードがありすぎたもん。
「先生に加護を与えてるんでしょ?そう言ってたよ」
ぼくの問いには
「――まあ、そういうことになるんですかね?なにせ、わたしもあの方々には滅多に会わないんで、よくわかりませんが……。
医者といったところで、この街のほんとうの上のほう……神界がどう動いてるかなんて、よく知りません。将来的には、あなたのほうが詳しくなるでしょう……そうなったら、あなたに教えてもらわないといけない」
わらいながら言った。
「これを返しに来たんです」
思い出しついでに、預かっていた水晶の首飾りを出すと
「ああ。それはあなたが持っておいてください。そのほうがいい気がします……そうですね。あなたには、見張りというか見守り役をつけるぐらいでいいでしょう。だれかに頼みます……」
だれだろう。たのしみだな。
「それより!先生こそ気をつけてよ。また流されたりしちゃだめだよ。下に行くの、たいへんだったんだから!」
ぼくが言うと
「――ええ、ありがとう。気をつけます」
ほほえんだ。
最初のコメントを投稿しよう!