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アチラのお医者さんとその師匠3の14
「しかし、そのとき鶴利は命を賭して平羅平羅城を中心に領内へ結界を張った。おかげで我らの侵略は阻まれてしまった。
わしらはその邪魔な力の源泉たる巻物を破壊せんと城への侵入を試みたが、それは叶わなかった。鶴利が施した防御が発動していたからだ。特にこの天守閣には、その水晶を持つ白紙の血筋のものしか立ち入ることが出来なかった。
鶴利にすれば、遺子・鶴々丸が元服して巻物を手にすれば、その力を元に親の仇を討ってこの国を再興してくれると考えていたのであろう」
幽霊うなずく。
「しかし、そうはさせぬ。わしは鶴々丸……さらってきたそなたに忍術をしこんで、この平羅平羅城に自ら侵入できるよう育てたのだ」
「な、なんと!」
「おまえのおかげで、この平羅平羅城の防御は崩れ去った。白紙衆も、もはや我が手にすっかり落ちたわ」
老師は、カラカラとわらいながら
「これぞ忍法・自家薬籠中の術!おぬしは見事、われらの手駒として動いてくれた。よくやった!立派なわしの弟子ぞ!」
トカゲ丸、愕然として
「……なんということか!それでは、それがしはこれまでの人生一切をたばかられていたというのか?知らぬこととはいえ、親の仇を師と慕い、同胞たちに刃を振るったというのか!」
顔をあげると
「おのれ、この人でなしめ!岩鉄坊や熊猫坊たちの無念が……」
「そのものたちなら、ここにおる」
冷然と言い放つ老師に対して、
トカゲ丸は
「なにを言っている?彼らは命を賭(と)して、それがしを救って……ややっ!?おぬしたちは?」
黒巻紙の後ろに立つのは、岩鉄坊と熊猫坊、そして黄巻紙。
「なんと!貴様たちも最初から黒巻紙とグルだったのか?仲間だと思っていたのに裏切ったのか!」
岩鉄坊は苦しげな表情で
「こぞう……」
老師は
「どうした、岩鉄坊。きまったことばがあるだろう?」
熊猫坊は、岩鉄坊の袖を引いて
「……ねえ、行者。ホウイチはどうなるの?あの子、どんくさいだけと思ってたけど、さっきのシーンでは、けっこうぼくにも良くしてくれたよ」
「ルンルン……」
「ホウイチ?それにルンルンだと?……って、あれ?」
――なんだか妙だぞ。
そのとき黒巻紙、舌打ち。
「……チッ、だめじゃないかルンルン。決まったセリフを言わないと。せっかくクライマックスに近づいてきたというのに」
――あれ?おかしいな。ぼくはたしか映画を観てるはずだったのに、なんでそこに知ってるものたちが出てるんだ。というか……あれ?
もしかして、ぼくも映画の中に入っちゃってない?
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