![9e7aa6b9-02d6-4af2-a5f9-b92b841876d4](https://img.estar.jp/public/user_upload/9e7aa6b9-02d6-4af2-a5f9-b92b841876d4.jpg?width=800&format=jpg)
春先の3月の夜中に鳴り響く雷鳴の中で
突然、夜の静寂さを奪うように
鳴り響く電話のベル。
暗闇を照らす雷光に浮かび上がり窓に映る暗い自分の顔。一瞬だけ部屋が明るくなってすぐにまた暗くなる。
期待してみても虚しいだけだと
分かってはいても…
心の片隅で少しだけいつも期待してる自分。
高校まではずっと
沖縄本島の南西20kmの海に
ポツンと浮かぶ
周囲もわずか15kmしかない
寂しいだけの何もない島で育った。
「もしもし」
「ごめん、こんな夜更けに。寝てた?」
電話の声の主は貴方ではなく
会社の同僚、
花村雫。
高校を卒業して東京女子外語大に進学した。
それは高3の春に島を出て行った准が
横浜にいると風の便りで聞いた。
ただそれだけの理由。
少しでも准の近くにいたかった。
それなのに彼の消息が分かることもないまま
大学を卒業して就職した小さな旅行代理店。
そこで仲良くなった同僚が雫だった。
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