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キーンコーン、カーンコーンと放課後を告げるチャイムが鳴って、担任教師から解放された教室内は騒めき始める。
急いで部活へ行く男子たち、楽しげに談笑を始める女子グループ、そして…スクールバックに大事にしまっていた淡い桃色の封筒を取り出し、覚悟を決めるのが私。
よし!今度こそはと心の中で気合いを入れて、席を立ち上がり教室を出た。
生徒たちが群がる廊下を縫うように進み、階段を駆け上がり目的地の図書室に着く。
騒めく校内から隔離されたように静かな雰囲気のそこで、あの人が来るのを深呼吸して待っていればガラッとドアが開き、ドキッと心臓が跳ねた。
「あれ、早川さん?また今日もどうしたの?」
ナチュラルな茶色の髪をふわりと揺らして、パッチリ二重の瞳で微笑むのは吉田先輩だ。
「あ、あのっ!今日は…!!」
若干震える足で、吉田先輩に近づく。本の独特な匂いが変に緊張を高めた。それに臆することなく、手に持っていたそれを吉田先輩に両手で差し出す。
大事に持っていた淡い色の封筒は、私の精一杯を綴った所詮ラブレターだ。
「これっ!受け取って貰えませんか!!」
ぎゅっと目を瞑り震えてしまった声で告げれば、吉田先輩が戸惑いながら口を開いた。
「あの…これって、どれかな?」
「え、」
どうゆう事だと目を開けば、私の両手には差し出したはずのラブレターは消えていて何も持ってはいなかった。
やばい!まさか…!と図書室を見渡せば、本棚の影に見えた小さな黒髪に思わず声をあげた。
「またヤラレタ!!!」
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