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「はぁー、」
キーンコーン、カーンコーンとゆったりと放課後を迎えた教室内は相変わらず騒がしい。
スクールバックから取り出したのは、昨日と違って爽やかな水色の封筒だ。
「あれ?チヒロまた渡せなかったの!?」
昨日のラブレターはハヤトに盗まれてしまったので、新しく書き直したラブレターをぼーっと見つめていれば、前の席のハナちゃんが話しかけてきた。
「うん、そうなの…。」
「マジか、昨日は結構気合い入ってたみたいだから渡すのかと思ってたけど。」
「あはは、ちょっとビビっちゃって…」
というか、昨日もユウレイの男の子に盗まれちゃったんだけどね。
昨日屋上で見たハヤトの悲しげに佇む姿を思い出して、新しく書き直したそれを渡すのはなんとなく止めとこうかなと思う。
私は、小さい頃から霊感が強くてユウレイを見ることができる。母も霊感が強い人だから多分、遺伝だ。昔はこの体質のせいで苦労した事もあったけど、今はもうそれなりに対処できるようになった。
私がハヤトに最初に会ったのは、二週間くらい前のこと。私が吉田先輩に告白しようか迷っていた頃だ。
学校からの帰り道、道路の片隅で黄色の花やチョコのお菓子が沢山お供えしてある横の電柱で小さな黒髪は蹲っていた。
すぐにユウレイだと気付いたけど、不安そうに揺れた黒い瞳と目が合って放って置けずに声をかけたのが最初だった。
それ以来、ハヤトは私によく会いに来た。そして、その一週間後に私は告白する度胸がなくて吉田先輩にラブレターを渡そうとしていたところ、ハヤトにラブレターを盗まれたのだ。
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