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テキパキと手を動かしながら商品を棚へ補充していると、ヌッと現れた人影に「いらっしゃいませー!」気持ち丁寧に慣れてしまった言葉をかける。
しかし、ここ数分店内に誰かが入って来るような音もしなかったし、自動ドアが開くこともなかったなと思い出す。
その人影をまじまじと見れば、ブツブツと呟きながら店内を徘徊するお婆さんのユウレイだ。
またやってしまった…。
高校に入って始めたコンビニのアルバイトだが、想像以上にコンビニという場所はユウレイが集まる場所だった。
最初は色々と大変ですぐに辞めようと思ったけれど、慣れてしまえばなんてことはない。もうすぐこのバイトを始めて半年くらい経つけど、こうやってよくユウレイに声をかけてしまう事もある。だけど、もうそんな気にする失敗ではなくなっていた。
それよりも、今はハヤトの事が気になる。今日も今日とて、盗まれた爽やかな水色の封筒を取り返そうと追いかけたけれど捕まえられず。バイトの時間が近づいて慌てて、引き返したのだ。
はぁー、とまた出そうになった溜息を飲み込めば、軽快な音が鳴り自動ドアが開く。どうやら今度はちゃんとしたお客さんのようだ。
「いらっしゃいませー!」
先程よりも気合いを入れて声を出しながら振り返れば、茶色の髪を揺らしながら店内へ入って来たパッチリ二重の瞳と目が合う。
「あれ、早川さん?ここでバイトしてるの?」
「よ、吉田先輩っ…!」
心の準備もなく現れた吉田先輩に、無意識に前髪を撫でる。やんわりとパッチリ二重の瞳を歪めて、綺麗に微笑む姿はもうお手本のようだ。
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