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「早川さんがここでバイトしてるなんて知らなかった、委員会帰りまた寄ろうかな。」
「また、ぜひ来てください!シフト多めに入れて待ってます!!」
「あはは、それじゃあまた来るね。」
嗚呼、優しい。緊張して前のめり過ぎた返答をする私に、吉田先輩は穏やかな声で返してくれる。
その声をジンワリと耳で堪能しポワポワした気持ちで、目当ての商品棚へと向かう吉田先輩の背中を見つめた。
学校以外で吉田先輩と会うのは初めてだ。家はこっちの方なんだろうかと勝手に妄想をしていれば、商品を手にした吉田先輩がレジへと向かうのでハッとして対応する。
「あっ、このお菓子!」
「あー、それ好きなんだよね。」
レジに置かれたそれは、赤いパッケージが印象的なチョコのお菓子だ。
「吉田先輩も好きなんですか、以前にこのお菓子を買いに来てくれる子も居たんですよ…そういえば最近、あの子、」
そう言った瞬間、サァーッと全身の血の気が引くような感覚に襲われる。心臓の音が大きく聞こえるようで、嫌だ。
あれ、あの子って…
見覚えのある白くて小さな手で、レジへ丁寧にチョコのお菓子を置いてくれたあの子。
それは、どうしても私の手からラブレターを盗んでいくハヤトに被った。
そして、私が最近見たこのお菓子は…
「早川さん?大丈夫!?」
そう言われながら肩を揺すられて、ようやく目の前の状況に気付いた。
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