1人が本棚に入れています
本棚に追加
何処か重たく聴こえるチャイムが鳴って、教室内は今日も変わらず騒めいた。
急いで部活へ行く男子たち、楽しげに談笑を始める女子グループ、そしてスクールバックから大事に取り出した優しい黄色の封筒を両手で持つ私。
「あれ、チヒロ?今日も吉田先輩に渡しに行くの?」
「ううん、これは…」
前の席で帰り支度をするハナちゃんが深刻そうな私を見て話しかけてくれたけど、その時に感じたあの子の視線に立ち上がる。
「ごめん、今日はもう行くね!また明日!」
「うん!ちゃんと気持ち伝えてきな!」
その声に背中を押されて、教室を出る。廊下は相変わらず賑わっていて、その中で静かに足を進める私は異質だった。
階段を一歩、一歩と登っている途中で、タッタッタッとやけに軽い足音が背後から聞こえてくる。そして小さな黒髪が、右手に持っていた優しい黄色の封筒を盗む。
右手から消えてしまった手紙を、私はゆっくりと追いかけた。きっと、あの子が居るのは屋上だ。
いつも以上に重たく感じるその扉を開ければ、ブワッと秋風が私へ向かってくる。
その先に見えた人影に、決して震えてしまわないように声をかけた。
「ハヤト!!」
最初のコメントを投稿しよう!