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「結城さん、おはようございます」
「おはよう」
「それ新しいスーツですか?見たことないかも」
「あぁ、そうだよ」
「よく似合ってますよ、かっこいい」
「そうかな、ありがとう」
朝は社内でも人気な綺麗どころに声をかけられ。
「結城!昨日頼んだデータは?」
「朝一でメール送りましたよ」
「え、あぁ、そうか」
「あと○○企画との打ち合わせ資料ですけど、共有ファイル作っておいたんで、関連データその他諸々そこに保存してありますから。チェックお願いします」
「え?それって昨日の午後頼んだやつか?」
「はい、お急ぎのようでしたので」
「おぉ、ありがと、ありがと」
いつも小言のうるさい部長に押しつけられた仕事も、難なくこなし。
「結城さーん、良かったらお昼ご一緒にどうですか?」
「ごめん、これからちょっと出なきゃいけないんだ」
「なんだ、残念。じゃあ明日は?」
「明日は一日打ち合わせでいないよ」
「そっか、じゃあまた誘います」
「ごめん、時間ないからもう行くね」
「気をつけて、行ってらっしゃーい」
社内にいるときはほぼ毎日と言っていいほどの誘いを何だかんだとかわしながら。
「結城くん、これがさっき言ってた書類だから目通しておいて」
「はい。あ、先輩」
「ん?」
「これ良かったら。次の打ち合わせで使えるんじゃないかと思ってまとめてみました」
「えー!マジか」
「自分のまとめるついでだったんで。いらなかったら、破棄してください」
「いやいや、よくできてる。ありがたく使わせてもらうよ」
自分のことだけでなく、周りをよく見ている視野の広さと心の余裕がある。
謎の「時間をくれ」宣言から早数週間。
結城くんは相変わらず、完璧王子の名に恥じない総合力というか、人間力を発揮している。
結城くんは否定していたけれど、これを完璧といわずに何と表現しろというのだろうか。
誰の目から見ても、いつも通りの彼だ。
ただ一つ変わったことといえば。
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