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いやいやいやそんな事じゃない
(優希先輩が……?、あの優希先輩が?、私のことを……??)
「え、あ、あの、先輩……」
(頭が、心が追いつかない……)
「ごめんね姫奈ちゃん……こんなこと言うつもりじゃなかったのに……」
(そんなことない!)
実際に自分の顔はさくらんぼみたいに赤くなってるだろう
でも……
(声が出ない…
私も優希先輩のことが好きなのに。好きなのに……
声が出ない……)
「先輩っ……私っ……」
声が出ない……好きって2文字を伝えたいだけなのに、
喉がやけるように痛い胸が何かに掴まれたように軋む。
たってられないほどの、めまい頭痛。
息が吸えない。喉がヒューと言う情けない音を立てる
「ひ、なちゃん……?、」
(はぁはぁ、きつい死にそう苦しい。でも伝えたいよ)
「せんっ、ぱいっ……わた、し、も、、」
(ダメだ、意識が……)
話してるはずなのに言葉にしてるはずなのに声は出ない
相変わらずヒューヒュー言いながら息をしてるだけだ
「姫奈ちゃんっっ?!」
(あは、優希先輩に心配されるとか嬉しすぎる
ていうか心配してる顔までイケメンとか羨ましすぎるよ)
________
「んんっ……」
(あれ、ここどこ……)
「おはよう、姫奈ちゃん」
笑顔で声をかけてくれた輝くような笑顔で、
クラっとなった
(先輩……)
ベッドの傍には本当に絵画に出てくるような感じだった。
詳しく言うと
優雅にお茶を飲みながら片手で本を読んでいた
その姿はどうしようもなく綺麗だった
実際はただ、用意された紙コップに麦茶が、あり
片手に本だったがそこはどうでもいい
「あの先輩っ……」
(まずは謝らなければ…… )
「おはよう姫奈ちゃん」
本日二度目のおはように軽く魂が天使に連れられ逝きそうになったがどうにかして天使と魂を連れ戻す
「先輩、ごめんなさい…………」
私は素直にそう謝った。
「いえいえ、こちらこそ、きっとびっくりしたよね。
いきなりあんなこと言って。今日のことは忘れてもらって構わないから。」
(……なんで、そんなこと思ってないのに!)
私の想いは伝わらない、優希先輩は、立ち上がり出ていこうとする。
「先輩っ!」
咄嗟に手を掴む
「まだ居てくださいっ」
その声はまだ弱々しいものだったかもしれない
「姫奈ちゃん……」
(優希先輩にこの思いを伝えたいのに……
いっそ全部話してしまおうか、私の過去を……)
「姫奈ちゃん、……大丈夫?」
ずっと難しい顔をして黙っていたからだろうか
優希先輩がこちらを覗いている
(決めた……)
「先輩……、さっきの答えを……」
(過去のことはまだ話せないけど、これなら……)
「え……」
「さっきの答えを聞いてくれますか……?」
優希先輩は、もちろんと言って答えてくれた
けど答えを言おうとした時、
「でも、言う前に1つ条件!」
「へ……?」
自分でも分かるようなとても情けない声が出た
というか条件って、なんだよ!条件って!
自分の心の中でツッコミを入れる
「絶対姫奈ちゃんいま、なんだよ、条件って!って思ってるでしょ」
(は……?)
こいつエスパーかって思った
「姫奈ちゃん顔に出やすいもん」
いや、意味わかん
「まぁ、でも先輩。条件って……?」
それが一番聞きたいんだ
(条件ってなに……)
「条件はひとつ!」
(はい!)
心の中で元気に返事をする
「先輩って呼ぶの禁止!優希か、せめて優希先輩って言ってよ!」
ギクリ、……いっつも心の中では優希先輩と呼んでいる私にとっては優希呼びはともかく優希先輩と呼ぶのは容易だ、
けど、いきなり馴れ馴れしくしたら、あれ、?こいつなんでこんなにすぐ呼べるの?って怪しまれるかもっ……
(どうしよう……)
優希だったら多分私もぎこちないだろうがさすがに先輩に呼び捨ては……
「姫奈ちゃん〜」
(……)
「あの、先輩……」
「ん?どうした、?てか本当に、先輩だけは禁止だってば!」
少し拗ねたようにほっぺを膨らます姿ですら可愛い。
今度はいつもと違う可愛さにまたもやハートを撃ち抜かれそうになる。
だが……、
「ゆぅ、き…………」
(これで合ってるよねっ?!)
「………………」
優希先輩は、黙ったまんまだ
沈黙がどうしても不安にしか感じない
「姫奈ちゃん……」
(なんだなんだ)
「やっぱり、僕好きだよ。姫奈ちゃんのこと」
(?!?!、名前については?!怖いよ?!
てか、やっぱり好きって?!なに?!怖いよ?!)
怖いと心の中で連発しながらも尋ねる
「あの、先輩……」
真剣な表情をした先輩に、そっと声をかける
真剣な表情がなにを表してるか分からなく怖くなってる
(……)
「姫奈ちゃんまた、呼び方先輩になってるよ!」
そう言うと一気に顔がふにゃふにゃとなり先程とは違う笑みを向けてくる
(一体この人にはどれだけの表情があるんだろう…)
そう思わずにはいられなかった。
出来ればずっとその事について考えておきたかったが
返事をしなければならない
少々強引だが話を戻す
「まぁいいです」
(我ながら強引だな)
「いいのそんな簡単に流さないでよ!?!」
先輩は、少し残念そうにしている
「先程の答えですが、」
どちらのかとは分からない、もしくは2人のか、
ゴクリと喉を鳴らす音が聞こえた。
「私は、事情があり他人に言葉で好意を伝えることが出来ません」
(言ってしまった……)
だがそのまま言葉を続ける
「だから、先輩に、沢山迷惑をかけるかもしれません。
でも、私は、先輩のことが……」
大急ぎで近くにある紙と、鉛筆を手に取りベットに戻る
先輩は、今から私がすることが分かるかのようにそっと見守る
私は紙に大きく
゛好きです ゛
と書いた。
それを見た先輩は、目をうるうるさせながら私の頭を撫でてくれた。
とても暖かい手だったのを覚えてる。
そして、この時潤んだ目をした表情の優希先輩すらでもキュンとした。
________
これが私と優希先輩の出会いであり、恋の始まりだった。
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