序章 君はまだ好きとは言えない

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序章 君はまだ好きとは言えない

「姫奈、 由奈っ行くよ〜!」 「はーい!行くよ、由奈〜」 「待ってぇ〜ママっ!パパっ!」 「今日はどこに行くんだー?」 「どこに行こうかしら?」 「水族館!!」 「よし、じゃあ行くかー!」 幸せだ。今その瞬間が最高の時間だ。 これは私と優希、いや優希先輩との出会いの物語…… ____ 「あのっ……!私ずっと優希先輩のことが、好きでしたっっ! 付き合ってください!、」 いきなり聞こえた声、 他人の告白現場を見るなんで初めてだ、 私の学校の図書室、その1番端っこの席が定位置の私 今は図書室に、1人きり静かな空間で本を読もうとした時 窓から見えた優希先輩の告白現場…… (また告白されてる……やっぱり人気があるんだな優希先輩……) 「ごめんなさい、僕には好きな人がいるんだ……でも嬉しいよ」 私は告白して振られてもないのに一気に気持ちが沈んだ (優希先輩……振られてもいいから告白したら、私のことも認知してくれるのかな……) 「は、はい……ありがとうございました……」 (やっぱり振られたのか、女の子泣いてたなぁ…… 先輩って言ってたから同級生か、2年の先輩かな……?) 「まぁいいや……、どうせ私には関係ないことだし……」 私には人に好意を伝えることが出来ない 好き、は勿論ありがとうなどの言葉も状況によれば 息が詰まって呼吸が出来なるなるほど 相手に向けた好意の言葉を言うことは体が拒む そして、今思えばこれが私と優希先輩が初めて話した瞬間だった。 「なにが関係ないのかな?困ったことがあれば相談によるよ?」 え……?なんで優希先輩が?、 「え、あ、あの……」 「ごめんね!いきなり声掛けてびっくりしたよね!」 「い、いえ!全く全然大丈夫です!」 (いやいや、ほんとはとてつもなくびっくりした) 「あ、そっか初対面か!ごめんね自己紹介しようかな!」 (勝手に話が進んでいくでいく……) 「僕は3年の髙橋優希だよ!呼び方は自由にどうぞ!」 輝くような眩しい笑顔で私だけを見つめてくる (かっこいい……) 思わず見とれそうになってしまう…… 「なにか聞きたいことはあるかな……?」 投げかけられた言葉に少し引きずり込まれそうとなった意識をなんとか連れ戻す 「い、いえ!特に!何も大丈夫です!」 (わぁ、絶対今私声裏返った……今までもさんざんキョドりっぱなしだったのに……) 「あはは!いいね!姫奈ちゃん!面白すぎるサイコーだよ! これからもよろしくね。」 優希先輩はさっきとは違う弾けたレモンのような笑顔で声を上げて笑っていた (え……、は……?なんで笑ってるの……?いやなんで名前?) そこまで笑われたら恥ずかしいしテンパる 「え、なん、なんでですか」 まだ優希先輩は笑いのツボから抜け出せないのか静かに笑いながらも答えてくれた 「だって、ずっと、キョドってるし、 声裏返るし……最高すぎるよ!」 ズキューンと、何かが胸に刺さる音がした、 正しくはした気がする。 この笑顔は今日見た先輩の笑顔の中で間違えなく1番の笑顔だ (写真撮りたい……) 思わずスマホを出そうとする手を止めながらなんとか喋る 「わ、わかりました……でもなんで私の名前、知ってるんですか……?」 (よし、だいぶまともに喋れる様になってきた) (でも本当になんで名前知ってるんだろう) 優希先輩の顔を見ると、しまった……というような顔をしていた。 「え、いや、あの、…………」 優希先輩はキョドりながら答えを探してるようにも見える (もしかして言いたくないのかな?) 「あの、先輩……何か、言いたくないことでも?」 言いたくないことならば、無理にでも言ってもらう必要は無い むしろ優希先輩に、名前を知ってもらえてるだけでもすごく嬉しいことだ 「いや!そ、そんなことない!えーっと、あ、友達に聞いたんだ!」 ……嘘だ 私には3年の先輩に親しい知り合いはいない (……) 「本当ですか?、」 そう声をかけると優希先輩はとてもバツが悪そうになり、 いきなり真剣な顔になった 。 (え、なに……) 「ねぇ、姫奈ちゃん……」 名前の話は流すつもりなのか…… (でもこんなに真剣な顔で言われると……ドキドキして、期待しちゃう……) そんなわけないことも分かってる 自分に言い聞かせる 「僕ね、姫奈ちゃんのことが……」 (え、え?もしかして……) そんなことじゃないと夢を見ている自分に言い聞かせる それにさっきの告白でも言ってたじゃないか…… ゛好きな人がいると ゛ 自分で言い聞かせながらもどんどん気持ちが沈んでいく 「好きなんだ!!!」 (は……?、) 優希先輩は方を震わせながら叫んでいた。 放課後でよかった。人が居なくてよかった、普段なら大きな声を出したら図書室から追い出されてただろう
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