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私はまたトングを使い、ステーキとなった肉を掴み――アルミホイルの上に置いた。
まだだ。まだ皿に置くのは早計だ。
鉄板の火を止めてから、優しく肉をアルミホイルで包む。
アルミホイルで包み込むことにより、内に熱が充満し肉の中まで火が通る。
更にステーキを少し休ませる事により、肉汁と旨味成分が肉の隅々まで行き渡るのだ。
この数秒の待ち時間。この時間はとても大事だ。
今までの工程を思い返す。
肉の焼ける音と、肉の焼けた香り。それらを反芻し味わう。
この間を私は、神の時間とよんでいる。
……よし。いいだろう。
私にはわかる。このステーキは旨味という点に置いて最高のポテンシャルを引き出している。
アルミホイルをゆっくり開く。
香りが三度鼻腔をくすぐる。
アルミホイルごと皿の上に乗せる。
完成だ。
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